砂壁のくずれる日々をながめては | 喜劇 眼の前旅館

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短歌のブログ

砂壁のくずれる日々をながめては ぼくらはいつか穴でつながる  我妻俊樹


一文でひとつながりに言ってしまえるようなことを、一字空けまで挟んでつながりを切ってる歌でしょうか。切ってるように見えてじつは繋いでるんじゃとか、上句と下句が並列してることを字空けは示してるのかもとか、いや直列だけどあいだの何かが抜けてるのかもとか、抜けてるように見せてるけど何も抜けてないみたいとか、そういうことを一字空けの周囲でいろいろ考える歌にこの歌がなってるかどうかは心許ないけど、そういう歌は言葉をフラットに使わないとつくりにくいと思う。言葉がつながってること前提の磁場、みたいのが歌にないとつながりをめぐる読みの揺れが生じないので。で、この歌をつくった頃は斉藤斎藤さんや宇都宮敦さんの作品を参考にしつつ、自作のフラット化を試みてた頃で、その試みはいったん中途半端に終わった気がするけど、今も中途半端に血肉化しているようでもある。
第四回歌葉新人賞候補作「水の泡たち」より。