題詠(3) | 喜劇 眼の前旅館

喜劇 眼の前旅館

短歌のブログ

くちばしを残して波にくずされる砂のペリカンだったそれだけ

相席の女の鼻にカナブンがとまってる 職安のある国で

着れないほど焦げたボーリングシャツそれは旗だから風のかたちに浮かぶ

「過ぎていくわ」天ぷら屋のシャッターに朝顔のかわりにぶつけてる小便

連絡橋に氷が張って溶けてゆく おんなの声でじゃあねと言った

おじさんと死のうか夜明けのコンビニが廃屋になるほど買い占めて

屋上におまえのシャツが車輪痕まみれの今朝に既視感がある

われわれは半透明だが向こう側がみえないくらい混雑している

塩化ビニールのかおる子の胎で二十年もくしゃくしゃだった英字新聞

カプセルホテルに至る星霜をよこぎって野牛をひきずった痕がある


題詠blog2009 021~030)