人生再生委員会 Chapter1 | Acousticな日々

Acousticな日々

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【Chapter1】海辺にて

世の中なんて、そう変わってはいない。
いわゆる「勝ち組」と言われる人種がいれば、「負け組」もいる。
たぶん私は負け組に属するのだろう。

30代は、まぁ順風満帆と言ってもいいだろう。だが、40代になって妻と娘との別離を味わった。
その時以来、坂道を転がるように悪化の一途を辿っている。

仕事を失い(元妻の願いを訊いて転職したのをきっかけに)、新たに職を得たとしても人員整理の対象となり、その職もあっという間に失った。

救いがあるという点では、ひとまず病気を患うこともなく(既往症はあるが)、健康体でいられることぐらいだろう。

ただ、自らの人生については、充分に絶望している。

ここ数日は、街を彷徨い、いろいろなことを考えてみたが、人生が好転すべき事由が思い至らず、結局のところは自ら命を絶つこと以外思いつくことが無かった。
係累もいない天涯孤独であるから、誰に迷惑をかけることもないだろう。
もっとも、行政に後処理を任せることになるから、それが面倒かけることになるのかもしれないが・・・

幾つか、方法を考えてみたが、ここのところの流行は身投げらしい。
どこで身投げするか場所を選んでみたが、海沿いの崖が最適らしいことを知った。

公共交通機関を乗り継いで、この場所に辿り着いたが、さすがに「早まってはだめだ!引き返すように!」という内容の看板がそこここに立っている。
あまりにも稚拙な呼びかけに失笑してしまった。

この場所に辿り着いてから、既に半日が経っている。ただ、吹く風に身を任せているのが心地よく、頭の中は空っぽになり、気がついたら時間が経っているというような感じだ。
決心もついているし、覚悟も出来ている。


【Chapter2】人生再生委員会

急に後ろから声をかけられた。気配を消して近づいたのだろうか、全く気がつかなかった。
「失礼ですが、綾谷光太郎様でしょうか?」
いきなり氏名を確認されたので、とても驚いた。
「はい。確かに綾谷ですが、あなた方はどちら様でしょうか?」
先頭に女性、その後ろには男性がふたり控えている。
「申し遅れました。私どもは“人生再生委員会”と申します。私がこのチームのリーダーで橋本と申します。」
先頭の女性がそう言いながら名刺を差し出した。
「“人生再生委員会”?」
聞いたこともない名称であるため、訝っていると
「政府の特殊機関になります。今日は綾谷様に折り入ってご相談があり、お声をおかけしました。」
先頭の女性は、そう告げるとパンフレットらしき封筒を差し出した。


つづく