今日は「コメ先物市場の廃止」についてです。

2021年の8月にお米の先物取引が廃止されるというニュースがありました。

今回はこのことについて解説していきます。

 

そもそも先物取引とは何?

先物取引とは…取引の予約!のことです。(デリバティブ取引の1種になります。)

今以上に値段が高くなってしまうことを避けるために先に買うことを予約する取引です。

※似たような取引として「オプション取引」があります。(こちらについても後ほど説明します。)

 

この「先物取引」は金利や債券(国や企業の借金)、通貨(ドルや円)取引で多く用いられていますが、実は私たちが食べるお米でも取引が行われたのです。

 

江戸時代に大阪堂島取引所で始まったコメの先物は、1939年にいったん廃止されたあと、2011年から再開してきましたが、農林水産省が本格的な取引への移行を申請しないため取引のほとんどが来年6月に廃止されます。

 

米の先物取引を行うメリットとは何でしょうか?

【メリット】

・生産者が価格変動リスクを回避し、経営を安定させられる。

例えば、田植えの時期(5月)に1俵(60kg)15,000円で売る先物契約を行えば、収穫の時期(10月)に豊作や消費の減少で1俵(60kg)10,000円となっても、生産者は15,000円の収入を得ることができる。仮に値段が20,000円と上がっても卸売業者の調達コストが下がるだけなので、卸売業者がリスクを負担することで生産者は価格変動リスクを下げることができます。

 

・卸売業者が大量の在庫を抱えないので品質劣化リスク・売れ残りリスクを回避できる。

大よその米の卸売業者は収穫時期に新米を仕入れ、その在庫を管理しつつ1年かけて小売業者に販売します。こちらをあらかじめ在庫の一部を先物取引を行い、需要期に必要量だけの米現物を受け取ることにより決済(=受渡決済)すれば、保管コストを削減できるほか、品質劣化・毀損リスク、売れ残りリスクを回避できます。

※ホクレン(ホクレン農業協同組合連合会)が昔から、小豆についてヘッジ取引を行っており、収穫時に生産者から買い取った小豆を1年から1年半かけて販売していきます。

その間、在庫の価格変動リスクを回避するため、ホクレンは、小豆先物市場で売りヘッジを行っています。現物で販売できた分に関しては、売りヘッジをはずします(=買戻しにより差金決済をする)。小豆の現物が不足した場合には、小豆先物市場で買いヘッジを行うこともあるそうです。

※買いヘッジ…、将来の価格上昇リスクに備えるものです。たとえば、将来、米の購入を予定している時、今後の価格変動に関係なく、現在の価格に近い価格で米を購入したい場合や、現時点で購入すれば発生する米の保管コスト(金利・倉庫費用等)の負担を避けれる。

※売りヘッジ…価格下落リスクに備えるものです。たとえば、将来、米の売却・販売を予定している時、今後の価格変動に関係なく、現在の価格で米を売却・販売したい場合や、保有している米の価格下落を回避したい場合などに用います。

※差金決済…現物の受け渡しを行わずに売却金額と買付金額の差額の授受により決済取引を行うこと。

 

・金融機関から融資を受けやすい。

大阪堂島商品取引所を介した取引は代金未回収リスクはないため、ヘッジ取引で価格変動を抑えたお米を担保にして、金融機関から融資を受けることができます。このように動産を担保にして融資する方法をABL(アセット・ベースト・レンディング、動産・売掛金担保融資)と言うそうです。

 

[図表1]ABL(アセット・ベースト・レンディング)の仕組み

 

米の先物取引が廃止されるということで自由な価格形成の手段が失われたことになり、JAが米価格統制力が落ちれば米価が下落する可能性が高まります。今後は海外輸出にも力を入れ、稲作農家の所得を向上していく必要があると思いました。