研究先駆けの京大講師が南丹で

 30年以上にわたって有機農業の研究と指導を続け、海外でも活躍する京都大フィールド科学教育研究センター講師の西村和雄さん(61)=農学博士=が今月、京大を退職し、自宅のある京都府南丹市日吉町を拠点に来春から農業学校を始める。自らが大地に立って農の知恵を世に示し、有機農業への誤解とくびきを解きながら「日本の将来を支える若い人を育てたい」と話している。


 西村さんは、有機農業が知られていなかった1970年代から農家と交流し、健康で安全な農作物の栽培について研究、自らも菜園を持ち、多くの農家を育ててきた。

 「成果主義」で時間のかかる仕事ができなくなった大学に見切りをつけ、定年前に京大をやめ農業の再生に全力を注ぐことを決めたという。


 先月の京大の学園祭で「最終講義」を行い、学生と市民に農業への熱い思いを語った。有機農業を「自然資源を有効かつ効率よく利用し永続可能な農業生産を可能にする農法」と定義づけ、資源を輸入に頼り切る日本が今後、「生き残るための道」と強調。「なぜうまい米を作らなかったのか。安心安全ではなく、美味しさ」「口にするものは命でないといけない」など、農業への深い愛情を言葉に込めた。

 さらに、「命をはぐくむ農業で、しっかりと収入を得ることができる世の中にしないとだめ」といい、北海道での大規模有機農業の取り組みなどを紹介した。


 ■2年間など3コース

 来春から始める農業学校では、2年かけて農業を学ぶコースや週末の「家庭菜園」コース、学生など対象の「ただ働き」(ボランティア)コースを予定。健康な農産物のアンテナショップや本物の味を楽しむレストランなども計画している。

 西村さんは「農こそが国の礎。全国各地にある本物の農業の芽生えを一つにつないで、一緒に走り続けたい」と話している。