通常のひとめぼれより10日ほど遅く収穫した「べたぼれ」の出来を確かめる佐々木さん=大崎市古川北稲葉

 宮城県大崎市古川稲葉の農業佐々木康広さん(56)が、自ら発見した「ひとめぼれ」の変異種「べたぼれ」の生産拡大に取り組んでいる。通常のひとめぼれに比べて茎が太く、1週間から10日間おくてなのが特長で、耐風性、耐冷性に優れる。佐々木さんは「ササニシキ、ひとめぼれに次ぐ、コメどころ宮城を代表するブランド米に育てたい」と意気込んでいる。


 2002年秋、稲刈りに汗を流していた佐々木さんは、自分のひとめぼれの田んぼの中に、15センチほど背丈が高い稲を2株見つけた。周囲が黄金色に実っているのに、その2株はまだ青かった。


 「ちょっと育ててみようか」。新品種栽培の歩みは、そんな偶然の発見から始まった。


 2株から取ったコメを種もみに、8アール、18アールと毎年少しずつ栽培を拡大。今年は60アールまで作付けを増やした。


 茎が太く、多少の強風では倒れないという特性は、これまでの栽培からも確認。食味も、そもそもがひとめぼれのため、良好という。


 耐冷性の強さは、大冷害に見舞われた03年、はっきりと出た。県の作況指数68と戦後2番目の不作で、佐々木さん方のひとめぼれなども同様に落ち込んだが、べたぼれだけは平年作を確保。幼穂形成期から出穂期が通常より遅いおくての特長が、冷夏の直撃を避けた格好となった。


 収量は今年、通常のひとめぼれ並みの10アール当たり9俵(540キロ)超を確保した。1割ほど落ちるとされる有機減農薬栽培の影響もほとんど出なかったという。


 佐々木さんは06年3月、ひとめぼれを上回る特長などから、この稲を「べたぼれ」と名付け、新品種として国に出願。県古川農業試験場(大崎市)も既に試験栽培に取り組んでおり、既存品種との違いなどが明確になれば、本年度内にも新品種として認定される。


 佐々木さんは「子どものころから植物に興味があり、それが変異種を見逃さない幸運につながった」と語り、「食味が良く、冷害に強く、風にも強いという地域が求める三拍子がそろっている。農協とも協力して栽培を広め、産地間競争に打ち勝つ県の主力品種にしたい」と張り切っている。

2007年10月11日 河北新聞