311日を境にいろんなことが変わった感のある今年ですが、そんな中GCNの活動は普段通りに続いていました。被災地への支援はもちろん大切なことですが、「普段通り」もきっと大事なことです。

 さて日本心理臨床学会ですが、昨年からやや変則的な開き方をしているのですが、今年は92()4()福岡で開かれる大会で、今年は研究発表と自主シンポの2つを持つことになりました。

 研究発表は「LGBTを対象とした無料電話相談に寄せられた相談内容の検討(2)」。こころの相談の集計結果の報告を、以前にも行いましたが、今回それから10年を経て、膨大にたまった相談ケースをあらためて集計。この10年の結果から何が見えるのか見えないのか、変わったのか変わらないのかなど解析していく予定です。

 また恒例の自主シンポは「大学をLGBT affirmativeな場にするために」という刺激的なタイトルで、GCNメンバーの他ゲストのスピーカーも交えて、活発な議論を繰り広げていく予定。乞うご期待です。

 それからそれより前63日(金)~5日(日)静岡で開かれる家族研究・家族療法学会では、自主シンポ「セクシュアルマイノリティの家族臨床~同性愛者と家族」を開催。今回はとあるレズビアンカップルとそのご両親に総出でお越しいただき、パートナーシップについてや家族の思いなどを聞くという企画。何が飛び出るかちょっとわからないドキドキものの企画です。これもご期待ください。

 さて、こころの相談(関東)の件数は、16件、29件、36件でした。震災直後は電話の件数も減りましたが、また少しずつこれも日常に戻っているようです。かぞくの相談は11件、20件、32件でした。GCNカンファは130日、43日に行いました。

 

 共同代表の平田です。

 御報告がえら~~~く遅れましたが、2月の定例会の報告をいたします!!

 2月6日に都内で開催した、今年度最後となる2月のAGPの定例会は

 「働くセクマイ  ~職場を、LGBにとって居心地のよいものにするために~」

 と題して、
●一般企業に勤めるレズビアンの方、および、
●御自身もゲイであり、企業内カウンセラーとして働いている臨床心理士の方、
 お二人をスピーカーとしてお迎えしました!

 スピーカーお二人の話をうかがったあとは、グループ・ディスカッション、さらにその後は全体でのディスカッションも行ない、なかなか濃密な三時間となりました!!

 参加者は19名で、会員外の方々も6名来ていただきました!


 トップバッターのスピーカーは、一般企業で働くヨウコさん(レズビアン)。
 ヨウコさんは今の職場ではカムアウトしておらず、カムアウトしないでいかに職場で過ごすかについて、とても参考になるお話でした。ヨウコさんは大手企業に勤めておられ、ヨウコさんの職場では、あまりプライベートな話を周りからつっこまれることはなく、「ダイバーシティ」の理念や「コンプライアンス」も(建前だけでなく)機能しているのも、よく作用しているようだとのことでした(これは、レズビアン女性とゲイ男性とでは、微妙に状況が異なるかも、という感じが平田的にはします)。ヨウコさんは、前の職場では、職場の人たちに、だれにどこまでカムアウトするかという「線引き」で苦労した経験があったので、今回の職場では「線引き」をしっかりとしているようでした。「カムアウトせずに、こんなふうに上手くやっていける」一例として、とても参考になるお話だったと思います。

 次なるスピーカーは、AGPの「カウンセリング・ネットワーク」の面々にはおなじみのMさん(ゲイ男性)。大手企業のカウンセリングルームに臨床心理士として勤めておられます。
 企業内カウンセラーとしてLGBTに関わった経験(関わる可能性)――(あまり関わった経験はないとのことでしたが)――および、企業においてどのようなことがLGBにとって問題となり得るか、などわかりやすくお話いただきました。また御自身が職場でカムアウトした経験についてもお話いただきました。何人か相手を選んでカムアウトした、とのこと。カウンセラーという職種の者が職場でカムアウトすることの意義について考えさせられ、刺激になるお話でした。

 その後は、参加者全員を三つの小グループに分け、それぞれのグループでディスカッションをしました。
 で、全体のグループで、小グループで出てきたトピックをさらにふくらませたり、新たなトピックをみんなで話し合ったりしました。
 以下に、いくつか印象的だったトピックを挙げていきます。


→「カムアウトすると、カムアウトした相手に負担をかけてしまうことがあると思う」という当事者の意見に対して、ヘテロセクシュアルの参加者の方が、「相手を選んでカムアウトしてもらえるなら、負担に思わないヘテロセクシュアルの人や、負担をかけてもらってもかまわないと思うヘテロセクシュアルの人もいると思う」という趣旨の発言をしていただき、エールを送って下さいました。


→レズビアンであることで職場で不都合が起きた時に、人事に話をもっていき、ちゃんと対応してもらい、事態の改善がみられたという経験を語って下さった方がいました。職場によっては、カムアウトしての申し立てによって状況が改善し得るという経験を語って下さったことは貴重だ、と平田は思いました。

→その一方で(大手企業ではなく)中小企業で働いていた参加者の方からは、問題が起きたときにちゃんと対処されるような規定やシステムが整っておらず、かなり「あり得ない」対応をされた話が挙がってきました。やはり、現状、職場による格差も大きいのだろうと思わされます。


→きいていて「素晴らしい!」と思った話として、AGPのメンバーで女性同士の結婚式を挙げたカップルがいるのですが、(一方の方(Nさん)は結婚時には御祝儀がいただける職場にお勤めなのですが)希望したらちゃんと御祝儀をいただけた、という話がありました。

 で、そのときの担当者との会話がなかなか愉快だったので、以下に紹介します。
   Nさん:「あの~、今度、私、結婚することになったのですが。」
   担当者:「そうですか。名字が変更になるというお知らせですか?」
   Nさん:「あ、いえ、同性結婚なんです。」
   担当者:「あ、そうなんですね。同姓の方との御結婚なんですね。
         (名字が変わらないんですね。)」
   Nさん:「そうじゃなくって、女性と結婚するんです。」
 →参加者一同爆笑、でした。


 自画自賛ですが、なかなかよい定例会になったと思います。
 普段、職場におけるLGBの体験について、共有したり、つっこんだ話をする機会が少ないように思います。「現状でOK」とはとても言えないケースを見聞きすることがあったので、このようなテーマの定例会を設けたわけですが、「働くセクマイ」というテーマは、今後も引き続き考えていくべき、LGBTを取り巻くissuesの一つだと思われます。また近いうちに、同様のテーマで集まりを開けるといいですね。
 スピーカーになっていただいたヨウコさん、Mさん、そして参加者の皆様、どうもありがとうございました!!



 

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参加者へのアンケート集計結果 (by イベント部会)


<参加者> 会員13名  会員外6名


アンケートに回答いただいた内容を以下に列挙します。

(回収率 47%)



<定例会を知った媒介>

→ニュースレター 3

→LOUDのWeb掲示板

→Twitter

→AGP会員から

→スピーカーを依頼されて

→パフスクールで講師を務めたAGP会員からアナウンスがあった



<つっこみたかった話題・疑問に思ったことなど>

→職場でのダイバーシティ(多様性)の具体例を知りたい

→もっといろんな職場の話が聞きたい

→職場に好きな人ができたときの対応

  (言いたいことが言えない心のもやもやをどう扱うのか)

→当事者だからこそ、セクシャルマイノリティの話題について

  言葉がつまるのは確かだなと思いました。

→コンプライアンスが、きちんとされているのは、やはり大企業なんだろうなぁ

  と思ってしまいました。そうじゃない人はどうしたものか、と。



<感想>

→久々のグループディスカッションがよかった。

  (今までは、講義形式プラス質疑応答がメインだったので)。

→ヘテロセクシュアルの参加者の方のコメントがよかった。

→有意義だった

→専門家の方がメインの団体に思われる(た)ので、

一般の方でも加わりやすい雰囲気だとありがたい。

→今回は、一般企業のレズビアンの方がスピーカーだったので、

  よかったです。意見も言いやすかった。

→仕事について悩み中なので参考になれば、と参加しました。

  同じ悩みが共有できたことがよかったです。

→落ち着いた、オトナの雰囲気でした

→久しぶりに定例会に参加しましたがよい雰囲気で話ができてよかった。

→一番身近なテーマだったため、自分の困っていることを話すことができた。

→いろいろな話が聞けて、参考になることが多々ありました。

→ノンケの方の意見が聞けたのは大きかった(いやなこと、大変なことを

  shareしてもらう、かけたいと思う大事な存在である。というノンケの方の

  発言には勇気付けられた)。

→実際にカミングアウトをした人の話は、どこの職場でも通じるところは

  あると思うので参考になった(自分がするつもりはないけど)。



<今後とりあげてもらいたい定例会テーマ>

→セクシャルマイノリティの健康管理(感染症・メンタル以外。糖尿病とか)

→病気について

→カミングアウトの安全な方法