嫌なんですよね、楽器を勝手に触られるの。

まして舐められるなんてもってのほかです。

演奏しているボクの視点からは、かじられてるように見えました。

「やめてください」

演奏中に言葉を吐くなんて普通あり得ないこと、SOSです。

大勢いいるコンテンポラリーダンサーとのセッション中の出来事。

 

公演ではないが、セッションを止めるわけにはいかないと思い、

唾か歯型が付いたんじゃないかという気持ち悪さを堪えて弾き終えました。

楽器が心配でもうその場には居れず、客席に戻って恐る恐る楽器をチェックしましたが、暗くてよく見えませんでした、何度も撫でて、違和感を探り、心のなかで楽器にごめんねと思いました。

 

常識や礼儀としては、この時点で、その自称ダンサーはボクに謝りに来るのが筋だろう。ミスを指摘された後のフォローの仕方でその人の価値は決まるとボクは考えている。ここで謝りにくれば、それなりに収まっていたであろう。しかしそれはなかった。

 

それからのセッションはそれなりに、客席から見て聴いていたものの、すべてが終わって明転したときに楽器を見ることへの不安がとても大きかった。木に歯型が付いていたら、終わりだ。唾が付いてフレットの金属を錆させるような方向へ助長する原因になっても、終わりだ。また、フレットとエボニー指板の間の僅かな隙間に唾が付着してもダメだ。そして、完全に唾が付いている弦。ひたすら気持ち悪い。

 

明転し、ネックの裏の僅かな凹みと禿げを見つけた。もしかすると歯が当たったためではないか。ショックな光景に、これは元からあった傷に違いない、と思うようになった。思うように努めた。思い込むこととした。

 

会が終わり、後片付けの時間になり、「やめてください」と注意したことに対して謝りに来るのを暫く待ってみたが、一向にその気配がない。ボクがこちらから出向いて抗議するのを少し待った理由は、ボクから謝るように促して謝ってもらうより、相手から能動的に謝ってくれた方が許せる気持ちが大きくなると考えたからだ。多くの皆もそうだろう。後片付けで何度かすれ違うも、アイコンタクトすらなかった。

 

決めた。自分から行く。他にも行かなきゃならない理由もある。それはシーン全体を考えてのことだ。楽器に、勝手に触れてもよいという認識をされては、ミュージシャン全体が困る。これまでたくさんのダンサーや、ボクの場合は特に役者と、多くコラボしてきた。無論、ハプニングはあり得るし、許容する。しかし、故意はNG行為だ。人の楽器なのだ。「空間をすべて自分のものと思うな!」とは、帰宅後、この話を妻にしたときに返ってきた名言だ。

 

さっきの行為だけど、謝ってくれませんかね?ボクはその理由を説明した。そして謝ってもらった。確かに謝ってもらった。ただ、謝ってもらっただけで、本当に伝わったのだろうか、本当に反省しているんだろうか。自称ダンサーはボクの目をじっと睨むといえば言いすぎな程度の範疇で目を見て離さない。そしてその場を立ち去らない。至近距離に睨みあってるような状態で、時折ニヤケつく。とても気持ち悪くなった。まるで喧嘩売ってるともとられかねないラインであり、危なっかしい状態であると感じた、なんなんだろうコレは。まるでボクが先に去らないいけないようにと促されてるようだ。なぜフリーズしてこんな反応をするのだ。ボクは、「やめてください」と言った直後のインターバルで謝ってこなかったことに対して既に不信感がありますから、そして片付けの最中にも待ってみたが向こうから来なかったことに対する不信感も増えてますから、とても不快な気持ちになりました。謝ってもらって、すがすがしい気持ちになれない。こういうときは、もう平謝りするしかないと思うんですよ。相手が許してくれたと分かるまで、先ずは黙って平謝りすればよい。

これは大事なことだから、本当にこの自称ダンサーが反省しているのか、試すことにしました。「もう一回きちんと謝れ!」反応は、悪い予想通りでした。「謝りましたよ!謝ったのに何を言ってるんですか」本人曰く、心を込めてきちんと謝ったそうだ。だがこういうのは伝わらないとまったく意味がない。だから先ず黙って平謝りなんだ。誠意を見せろとはこのことだ。まして、最初にも中盤にも謝るタイミングはあったはずだ。ボクから促しに行って、謝ったからいいでしょ、と返ってきたわけだ。怒りましたね。次に、怒りのやり場をどこに向けようか、どう消化しようか、つまりどう彼にチャンスを与えようかと考えた。。。そして名案が閃いた!
 

「楽器にも謝ってください」

 

(そりゃそうだ!)そしてそうすることで、楽器にも謝ってもらうことで、ボクはきっとギリギリのラインで納得できるメンタリティになれるんじゃないかと考えた。ただ、返ってきた答えは「楽器には謝りますけど、あなたにはもう謝ってるんで謝りません」でした。確かに、言葉の上ではそうですね。残念賞。もういい大人なので忠告はしませんが、行為は責任取れる範囲ですることと、注意の後の振る舞い方で、その人の徳の高さが分かります。

(先輩ダンサーS 突入/中略)

最後に、自称ダンサーが楽器に謝ってくれてる姿を見て、これがきちんと謝っている姿に見えたので、ボクは心を落ち着けることが出来ました。やれやれ。

 

帰り道、ミュージシャンに「荻野くん、怒るんやねぇ、ボクもね、あるんよ…あれ本当やめて欲しいねん」と言われましたが、だったらそれ、怒らなあかんとこですよ!先輩!

やっぱり稀に居るんですね、他人の楽器に勝手に触れる人、無茶する人。

自ら謝りにこない人は、こちらから謝らせに行っても、所詮この程度なのでしょう。

ボクは金輪際、不特定多数もしくは見ず知らずのパフォーマーがいるセッションへは参加しないだろう。もちろん自らを守るため。楽器を守るため。

 

さっき神社に寄りました。実は毎日行ってるのですが、今日はまだだった。神社はいいです。自分の心の状態が見えたり、お祓いをうけたような感覚に近いものになります。それから帰宅しました。メリークリスマスw

ギターを再びチェックして、ごめんねと思いながら、綺麗に拭いて、丁寧に弦を張替えました。
気持ち悪いですから。
嫌なんです、楽器を勝手に触られるの。

明日からまた、ええ音出してねーーーーーーーーーーーーーー!