◆赤信号みんなで渡れば怖くない

 

1980年頃に「赤信号みんなで渡れば怖くない」という言葉が流行語となりました。当時、活躍していた漫才コンビ「ツービート」が流行らせました。

 

これは、集団において危険な判断をしてしまう心理、「リスキーシフト」を表しています。

 

◆リスキーシフトとは

 

物事を決断する場合、一人で決めるよりも、「みんなで話し合って決める方が良い」と言われたことがありますよね~はてなマーク

 

確かに、複数の人間で話し合いをした方が、偏らずに公平に物事を決めることができるようにも思えます。

 

しかし、集団で話し合って決断を下す時には、一人で決断する時には生じなかった危険が伴うのです。

 

その一つが【リスキーシフト】と呼ばれるものです。

 

 

これは、集団で話し合いをすると、一人で決断する時よりも、「報酬は高いが危険も高い行動」を選択しやすくなるという現象です。

 

1961年、アメリカの心理学者マイケル・ワラックは【CDQ(選択肢ジレンマ質問紙)】を開発しました。

 

これには、「得られる報酬は高いが危険も高い選択肢」と、「報酬は低いが危険も低い」という二つの選択肢のどちらかを選ばせる12の場面が書かれており、どの程度の成功率であれば報酬の高い選択肢を選ぶのかを答えさせる質問紙です。

 

◆集団極化とは

 

アメリカの心理学者ジェームズ・ストーナー(1935年~)は、このCDQを使い、被験者たちが単独で決定した回答と、話し合いで決定した回答を比べてみました。

 

すると、話し合って出した回答の方が危険の高い選択肢を選ぶ傾向が顕著に高いことが示されたのです。さらにその後の研究から、集団の決断には二つの極端な傾向があることがわかりました。

 

物事の決断に慎重な人たちが集まって話し合いを行うと、一人の時の決断よりもさらに慎重な方向に傾き、反対に、危険を顧みない人たちが集まって話し合いを行うと、一人の時よりもさらに危険の高い決断に傾くのです。(左矢印ここ大事)

 

両者をまとめて【集団極化】とよびます。

 

◆集団極化が起きる理由

 

大阪大学大学院人間科学研究科名誉教授の釘原直樹(くぎはらなおき)博士によると・・・

 

「一つの理由は、参加者それぞれが、自分の存在をアピールしようとするためです。あいまいな意見よりも極端な意見を言った方が、集団の中で自分の存在を際立たせられると考え、それぞれがより極端な意見を言おうとします。」

 

「二つ目は、集団内の多くのメンバーの考えが同じ方向に片寄っているため、その方向に話が進みやすくなり、最終的に全員がその意見に説得させられるためです。」

 

 

「リスキーシフトは危険な決断を生み出す傾向があります。しかし、場合によっては思い切った決断が大きな壁を打ち破る力を生むこともあります。集団で行う決断は時と場合によって良くも悪くも働くので、決断を一人でするべきなのか、話し合ってするべきなのかは一概に言えません。」

 

(参考図書)ゼロからわかる心理学(別冊ニュートン)

 

こちらも参考にしてください~下矢印

 

★リスキーシフトが起きる原因(マイナビウーマン)より

 

(1)集団では多数派の意見が目立ちやすいことにより、無意識にその意見を補完し合う心理状態が作られるため

 

(2)多数派の意見に強く同調することで、「仲間として好ましい人物」と認識されたい心理が働くため

 

(3)集団においては「極端な意見を言っても責任が分散される」という意識が働くため

 

(4)集団において、より過激な意見を出す人物が注目されやすい傾向にあるため

 

(5)集団の中に、他者が「NO」と言えないほど影響力の大きい人物が存在するため

 

(参考)心理学ミュージアム

【心理学】リスキーシフトとは?(マイナビウーマン)
 

過去記事

 

【心理学講座】リスキーシフト

 

後半に注目すべき解説があるので、是非、お聴きになってください。では~耳