◆ 伊豆大島に流刑される

 

かねてから小角の集団に不快の念を抱いていた朝廷は、訴えを受けるや即座に軍兵を葛木山に派遣した。が、その自然、地勢を知り尽くし、数百の信奉者に守られ、なおかつ、『孔雀明王経法』の大神通力を獲得している小角を捕えるのは、容易なことではない。軍兵をさんざんに翻弄され困り果てた朝廷側は、策を弄し、小角の母・白専女(はくとうめ)を捉えて人質としたために、小角は葛木山を降りて縛につき、伊豆の大島へ流されることになった。文武3年(699)、小角65歳のことである。

 

伊豆大島近海で頻発する地震(2/14)より

 

この伊豆大島への遠流の刑が、小角の超能力のほどを広く世に知らせることになる。

 

まず、島への舟が暴風雨で沈みそうになったとき、『孔雀明王』の呪法でたちまち海を鎮めて見せた。大島では、昼間はやむなく庵に行じたが、夜になると富士山に飛んで行っては修行を重ねた。夜ごと、松明のような火の行列が三原山の山腹を登り、山頂から虚空のかなたに消えてゆくのが、遠く伊豆半島から望めたが、それは小角の空中飛行のあとであった。

 

 

ここでも不思議の術を使って人々を救った小角は、島人に「行者さま」と、慕われるようになったが、役人だけは何かとこうるさく彼を悩ます。一計を案じた小角は、その呪力のほどを見せつけることにした。

 

小角は人々を前に、周囲の巨岩に向かって念をこらし、呪文を唱えた。と、無数の岩が空中に浮き上がり、すさまじい音を立ててぶつかり合う。人々の肝を奪った巨岩の空中乱舞は1時間も続いたが、小角が術をとくと静かに元の場所に舞い降りたのである。

 

この流刑中、小角は空中飛行術を使って、富士山だけではなく関東や東北の霊山をくまなく訪ね、山林修行の道場として開いていった。実際は、小角を慕ってあとを追ってきた弟子たちの仕事だろうが、こうして役行者小角が日本古来の山岳信仰に密教の秘法を加えて開いた、新しい独自の宗教『修験道』は、全国に広まっていったのである。

 

【草津・信州の旅】戸隠神社(3)(5/25)より

(※左端が役行者像、隣が学問行者像、右端が延命地蔵菩薩像)

 

また、小角は「よく鬼神を役使して様々の奇跡をなした」と伝えられるが、その鬼神とは、彼の秘教集団に加わった山林修行者や山の民・・・その呪力や謎めいた暮らしぶりから、朝廷や里人に恐れられていた人々のことを指しているのだ。さらには、各地の霊山に古くから住まう神々も、小角の霊力にそこを道場として開くことを快く許したことを意味している。

 

◆ 先駆的な密教の体現者

 

役行者にまつわる伝説や奇談は数多く存在する。が、正式な歴史として記録されたものは「大島の配流」のみである。しかしながら、なぜ一優婆塞(朝廷の許可を得ていない私度僧)である小角の存在が、広く民衆の間に語り継がれていったのだろうか。

 

ひとつには、外来の宗教の霊験に対する、潜在的な渇望があり、小角がそれに具体的な呪術力で応えたからだろうと考えられる。古来一般的であったシャーマニズムと、渡来の密教、さらに、神仙術をも一体化させた役小角。いわば、空海により密教が正式に日本に受容されるまでの、地慣らし的な役割をしたのがこの僧だったといえるだろう。

 

 

伝承によれば、役行者小角は流刑を許された大宝元(701)年の6月7日、その母を鉄鉢に乗せて片手に捧げ、明け染めた暁の空の中を、五色の雲に乗り、天に昇っていったという・・・(『密教の本~驚くべき秘儀・修法の世界』)より

 

             

 

※役行者(637年~701年)は‟空中飛行術”を駆使したと言われています。主人の守護霊さんによりますと、「鳥のように空を飛べたわけではなく、山の頂から頂へ、カンガルーのようにポンポンポンと飛び跳ねながら移動した~」というのですよ。真偽のほどはわかりませんが~はてなマーク

 

また、「空海は時空を移動できた~」とも言います。木内鶴彦氏は臨死体験の際に過去と未来に行ってきましたが、空海さんが時空間移動できたのは、臨死体験無しでしょう。「未来記」「未然本紀」を残した聖徳太子も時空間移動できたのかもしれません。二人とも超人ですからね~キョロキョロ

 

(過去記事)あの世から見たこの世(1)(2015/10/2)

あの世から見たこの世(2)(2015/10/3)

原始の地球に月はなかった(2018/1/4)

 

役行者弘法大師空海(774年~835年)は、同じ時代を生きたわけではありませんが、無名の若き空海が山岳修行したことは有名な話であり、役行者と共通する点もあります。また、なんといっても、密教界を代表する二人です。次回からは、空海の生涯について連載しようと思っています。う~ん 旅から帰ってきてからになるかもしれません。ではでは~流れ星