≪森羅万象のいのちを体感する≫

 

五大にみな響きあり。

六塵(ろくじん)ことごとく文字なり。

色塵(しきじん)の字義差別(じぎさべつ)に

顕形表等(けんぎょうひょうとう)の色あり。

 

【現代語訳】

五大(地・水・火・風・空)の現象にみな音声の響きがあります。見えるもの、聞こえるもの、嗅げるもの、味わえるもの、触れられるもの、考えられるもの、という六つの対象は、すべて文字であり「ことば」です。見えるものの文字や「ことば」の真の意味とは、そのものの「色」と「形」と「動き」のことです。(『声字義』)

 

【高野山・関西の旅】慈尊院・丹生官省符神社(2018/5/25)より

 

この世界の森羅万象に音や響きがあり、その音声は人間の言葉ではなく、大自然の『ことば』であり、我々の対象であるすべての現象は、それ自体が文字(「ことば」)である。そして、目に見えるすべての現象の『いろ』と『かたち』と『うごき』もまた文字(「ことば」)である。これは、空海の『ことば』論です。

 

たとえば、水の音は、わたしたちに川や雨や風や流れなどの存在を伝えてくれる『ことば』です。山野に咲く花や鳥の声は季節の移り変わりを伝える『ことば』であり、大空を流れる雲は風と気候の変化を知らせてくれる『ことば』です。

 

【6と7の架け橋】鏡の中のもう一人の自分(10)(2018/5/26)より

 

このように、空海は、大自然のすべての存在が『いのち』の『ことば』を語りかけており、その『ことば』は、単に現象の存在を伝えているだけではなく、現象の本質を表現しているといっています。いわば、大自然の『ことば』は、大自然の『いのち』の真理・実相を直接われわれに語りかけているということです

 

自然の環境から離れて生活している現代人にとっては、その『ことば』は遠い存在です。自然の息吹という言葉がそもそも自然の『いのち』を直接体感していることの表現である、ということにもっと思いをはせるべきではないでしょうか。(『日本人のこころの言葉・空海』)

 

 

地元ネタの宣伝です。20日午後7時半から、NHKで放送の『ブラタモリ』は、「釧路湿原~世界に誇る釧路湿原のスゴさとは?~」、27日に放送されるのは、「阿寒・摩周~“色”とりどりな宝の秘密とは!?~」です。NHKの回し者ではありませんが、是非ご覧になってください!爆笑

 

釧路川

 

(参考) ブラタモリ番組HP

(過去記事) 蛇行する川への復元(2017/4/23)

 渦巻きは重要な聖なるシンボル(2017/4/23)