ミルグラムのアイヒマン実験(サンデーモーニングより)

 

数年前にTBS系「サンデーモーニング・風をよむ」で放送された「アイヒマン実験」です。実験そのものについては4分頃からですが、その前振りとして、「命令に従ってしまう心理」を彷彿とさせる事件の紹介から始まります。それは誰もが陥る可能性があるのです。

 

 

ミルグラム実験(Wikipedia)より

閉鎖的な状況における権威者の指示に従う人間の心理状況を実験したものである。アイヒマン実験とも言う。米国の心理学者、スタンリー・ミルグラムが1963年にアメリカの社会心理学会誌に投稿した、権威者の指示に従う人間の心理状況を実験したものである。

 

実験の結果は、普通の平凡な市民が一定の条件下では冷酷で非人道的な行為を行うことを証明するものであった。この実験から、かかる現象をミルグラム効果とも言う。

 

≪前提条件≫

この実験における実験協力者は新聞広告を通じて、「記憶に関する実験」に関する参加者として20歳から50歳の男性を対象として募集され、一時間の実験に対し報酬を約束された上でイェール大学に集められた。実験協力者の教育背景は小学校中退者から博士号保持者までと変化に富んでいた。

 

 

実験協力者には、この実験が参加者を「生徒」役と「教師」役に分けて行う、学習における罰の効果を測定するものだと説明された。各実験協力者はくじ引きで「教師」(実はこの実験の真の被験者)とされ、ペアを組む別の実験協力者(実は役者が演じるサクラ)が「生徒」(あるいは「犠牲者」)となった。

 

 

くじには二つとも「教師」と書かれており、サクラの実験協力者はくじを開けないまま本来の被験者に引かせ、被験者が確実に「教師役」をさせるようにしていた。

 

≪実験の内容≫

被験者たちはあらかじめ「体験」として45ボルトの電気ショックを受け、「生徒」の受ける痛みを体験させられる。次に「教師」と「生徒」は別の部屋に分けられ、インターフォンを通じてお互いの声のみが聞こえる状況下に置かれた。

 

そしてこの実験の肝とも言うべき部分は、被験者には武器で脅されるといった物理的なプレッシャーや、家族が人質に取られているといった精神的なプレッシャーは全くないことである。

 

 

「教師」はまず二つの対になる単語リストを読み上げる。その後、単語の一方のみを読み上げ、対応する単語を4択で質問する。「生徒」は4つのボタンのうち、答えの番号のボタンを押す。

 

「生徒」が正解すると、「教師」は次の単語リストに移る。「生徒」が間違えると、「教師」は「生徒」に電気ショックを流すよう指示を受けた。

 

また電圧は最初は45ボルトで、「生徒」が一問間違えるごとに15ボルトずつ電圧の強さを上げていくよう指示された。電気ショックを与えるスイッチには、電圧とともに、そのショックの程度を示す言葉が表示されている。(中略)

 

 

ここで、被験者は「生徒」に電圧が付加されていると信じ込まされるが、実際には電圧は付加されていない。しかし各電圧の強さに応じ、あらかじめ録音された「『生徒』が苦痛を訴える声」がインターフォンから流された。

 

電圧をあげるにつれて段々苦痛のアクションが大きくなっていった。記録映像で確認できる生徒のアクションは、まるで拷問を受けているかの如くの大絶叫で、ショックを受けた途端大きくのけ反る等、一見してとても演技とは思えない迫力であった。(中略)

 

 

被験者が実験の続行を拒否しようとする意思を示した場合、白衣を着た権威のある博士らしき男が感情を全く乱さない超然とした態度で次のように通告した。

  1. 続行してください。
  2. この実験は、あなたに続行していただかなくては。
  3. あなたに続行していただく事が絶対に必要なのです。
  4. 迷うことはありません、あなたは続けるべきです。

四度目の通告がなされた後も、依然として被験者が実験の中止を希望した場合、その時点で実験は中止された。そうでなければ、設定されていた最大ボルト数の450ボルトが三度続けて流されるまで実験は続けられた

 

≪実験の結果≫

実際の実験結果は、被験者40人中25人(統計上62.5%)が用意されていた最大V数である450ボルトまでスイッチを入れた、というものだった。中には電圧を付加した後「生徒」の絶叫が響き渡ると、緊張の余り引きつった笑い声を出す者もいた。

 

 

全ての被験者は途中で実験に疑問を抱き、中には135ボルトで実験の意図自体を疑いだした者もいた。何人かの被験者は実験の中止を希望して管理者に申し出て、「この実験のために自分たちに支払われている金額を全額返金してもいい」という意思を表明した者もいた。

 

 

しかし、権威のある博士らしき男の強い進言によって一切責任を負わないということを確認した上で実験を継続しており、300ボルトに達する前に実験を中止した者は一人もいなかった

 

 

「教師」と「生徒」が同じ部屋にさせた場合や「教師」が「生徒」の体に直接触れさせることで電圧の罰を与えて従わせる場合など「先生」の目の前で「生徒」が苦しむ姿を見せた実験も行われたが、それでも前者は40人中16人(統計上40%)・後者は40人中12人(統計上30%)が用意されていた最大V数である450ボルトまでスイッチを入れたという結果になった。(以下略)

 

映画「ハンナ・アーレント」より

 

 

昭和天皇の敗戦分析の中で、「わが国の国民性は、付和雷同性の多いことが、戦争防止の困難のひとつであった」とあります。それは大いにありますね。

 

学校教育の中では討論する場がなく育ち、兎にも角にも「みんなと一緒」が好まれ、個性尊重とは名ばかりです。日本人のDNAに村八分、仲間はずれが怖いという遺伝子があるのかもしれません。

 

≪付和雷同(ふわらいどう)

自分にしっかりとした考えがなく、他人の言動にすぐ同調すること。「付和」は定見をもたず、すぐ他人の意見に賛成すること。「雷同」は雷が鳴ると万物がそれに応じて響くように、むやみに他人の言動に同調すること。(引用終了)

 

 

世界遺産に認定された翌日から人がワンサカ押しかける、テレビで称賛された人物が愛用しているグッズ、出前の品に注文が殺到し、将棋のルールも知らないのに専門誌がバカ売れ・・・ショボーン

 

その付和雷同しやすい国民性が再び悪い方に利用される時代がやってきたのかもしれません。アイヒマン実験を日本で実施しましたら、もっと高い数値が出たのかもしれません。

 

「アグネスさん、それは取り越し苦労というもんですよ~」

 

白人さんだろうが、日本人だろうが、人間心理に大きな違いはないはずで、アイヒマン再登場とならなければよろしいのですが?

 

映画「ハンナ・アーレント」予告編