次元扉

≪目の前に現れた25年前の自分≫
歴史や記録をたどっていくと、現在の意識が未来とも過去とも共鳴のような現象を起こすことは、私だけが経験していることではないということがわかってくる。(注:私とは布施泰和氏です)

ギ・ド・モーパッサン(Wikipedia)
モーパッサン

19世紀のフランスの文豪ギ・ド・モーパッサンは、1889年のある夜、部屋の中に入って来たもう一人の自分に出会った。もう一人の自分は実際に椅子に座って、当時書いていた小説の続きをぺらぺらとしゃべり始め、モーパッサンはそれを書きとめることによって、小説を完成させたというのだ。意識の中で未来の自分と共鳴して、小説を書き上げたのだろうか。

ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ(Wikipedia)
ゲーテ

『ファウスト』で有名なドイツの作家ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテが経験したという不思議な現象だ。

ある日、ゲーテは知人の家を訪ねた後、田舎道を馬に乗って進んでいると、向こうから馬に乗ってやってくる不可解な男に出会った。すれ違うときに相手の顔をよく見ると、その男はまるで自分ではないか。

ただ違うのは、自分が今まで着たことのないような服装であったことだ。もう一度確かめようと後ろを振り返ると、その男は消えていた。奇怪に思ったが、ゲーテはすぐにそのことを忘れてしまった。

それから8年後、ゲーテは同じ小道を今度は知人宅に向かって馬に乗って進んでいた。ふと見ると、自分が着ている服が8年前に出会った≪自分≫が着ていたものと同じであることに気づき、驚いたという

このゲーテのケースが、私のデジャブ的な体験をよく言い表している。ゲーテは最初に、8年後の自分に出会ったのだ。そのときの奇怪な感じは、おそらく私が最初に経験する奇妙な感覚と同じであろう。そして8年後に、そのとき見た自分が今の自分であることに気づく。

私が2回目の経験で1回目の経験を思い出して確認するのと同じだ。私の場合は、想念を通して未来の自分と共鳴のような現象を経験しているのに対して、ゲーテの場合は、映像を通して同じ現象を体験したのである。

ということは、想念や映像を含む意識と深く関係する何かが、未来や過去に向けて、つまり時間を超越して飛び交っている、あるいは時間を超越して瞬時に出現するような現象があることになるわけだ。

西丸震哉(Wikipedia)
西丸

農水省で技官を務めた食生態学者で探検家の西丸震哉も、同じような経験をしている。

尾瀬湿原の奥にある「岩塔ヶ原」で西丸ら5、6人がある日の夕方キャンプをしていたところ、一人の男が近づいてきた。西丸らはちょうど夕飯の支度をしている最中で談笑していたが、その男は十数メートルほどの近くにまで来ていながら、西丸らの話し声にも知らん顔で、全然見向きもせずにそのままスーッと横を通りすぎて行った。

「立ち入り禁止の理由、岩塔ヶ原」より
岩塔ヶ原

(管理人)
立ち入り禁止区域となっており、GoogleMapにも表示されません。
・山窩の地下の大神殿がある
・山窩の集落跡が残されている
・昭和中期に国が隠蔽した
・集落跡には石塔が残されている
・平将門の終焉の地
・・・など諸説あります。(将門?!)
(参考) 尾瀬の山窩集落「岩塔ヶ原」の謎を追う①

夕暮れ時に、しかもこのような山の中に一人で来るのはおかしいを思って、西丸がその男を追いかけて大声で呼び止めたが、その男の姿は消えてしまった。

それから25年後、西丸は岩塔ヶ原のキャンプ場に再びやって来た。今度、同じ男が出てきたら、正体を暴いてやると思って、その男を待った。近くで遭難した浮かばれない登山者の靈か何かだと西丸は考えたのだ。

二日目の夕方。ふと目を上げると、25年前に出会った男と同じ姿恰好をした登山者が現れた。西丸はすぐに突進し、その男の進路上に立ちふさがり、両手を広げ、「ちょっと待った、キミ!」と叫んだ。

ところが男は、そんな制止には目もくれず、ちょっとうつむき加減で西丸に向かってドンドン近づいてくる。帽子を深く被っているため、顔はまだよくわからない。しゃがんで下からその男の顔を覗き込む。ほとんどぶつかりそうなところで、西丸は危ない!と横っ跳びでその男を避けた。

西丸はその男の顔をはっきりと見た。それは25年前の自分であったのだ。右頬には除去する前のホクロもちゃんと付いていた。その≪自分≫は、まるで何事もなかったかのように歩いて視界から消えていった。


「シンクロニシティ『意味ある偶然』のパワー」より転載