イタリアでは12月4日に、「議会制度を一院制に変える憲法改正の是非を問う国民投票」が実施されます。結果如何によっては金融危機が起きるという報道があります。

レンツィ首相はかつて「国民投票で否決されれば辞任する」と発言しており、政局が不安定になる可能性があります。イギリスの国民投票、米大統領選の結果にみられるように、想定外のことが続いています。それらにショックを受けた投資家たちの間で緊張感が漂っているようです。


イタリア改憲否決なら銀行部門に新たなリスク(11/28 FT紙)

今週末のイタリア国民投票でレンツィ首相の憲法改正案が否決された場合、経営難にある銀行8つが破綻する恐れがあり、続く市場の混乱の中で投資家は各行の資本増強に応じようとしなくなると政府当局者や銀行家らは見ている。

国民投票で負ければ辞任すると公約しているレンツィ氏は、4兆ユーロ規模のイタリアの金融システムの問題を市場の力で解決するという考え方を支持し、有権者の離反を招く欧州連合(EU)の新規則による「解決」を避けている。

新たな規制による破綻処理は、株主と社債保有者の両方に損失を負わせて銀行を再生、必要ならば清算する仕組みで、数百万人の個人投資家が銀行債を買っているイタリアでは特に物議を醸している。

レンツィ首相
イタリア02

政策当局は、イタリアでの銀行破綻がユーロ圏の金融システムの混乱の引き金となる事態を憂慮して状況を注視している。

改憲案が否決されてレンツィ氏が辞任した場合、新政権樹立までの不透明な期間が長引き、市場不安が続いて銀行の命取りになるのではないかと銀行家らは恐れる。3600億ユーロの不良債権に対する懸念が広がる中、イタリアの銀行部門は今年、時価総額が半分以下に減っている。

イタリアでは8つの銀行が苦境にあることがわかっている。資産規模で国内3位のモンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナ(モンテパスキ)、中堅のポポラーレ・ディ・ビセンツァ、ベネト・バンカ、カリジェ、それに4つの小銀行が昨年救済を受けた。

肥大化したイタリアの金融システムは、経済の停滞と不正融資によって弱体化しているが、歴代の監督当局と政権はこの問題に取り組んでこなかった。

だが、国民投票の結果が否決になった場合の混乱を考えると、米JPモルガンによるモンテパスキの増資計画も含めて、市場の力による解決は疑わしく見えると当局者や銀行家らはいう。

■モンテパスキの増資失敗なら信用不安も

イタリア財務省の元チーフエコノミストでLCマクロ・アドバイザーズ創業者のロレンツォ・コドーニョ氏は、国民投票の最大の懸念は銀行部門に及ぶ影響だと論じる。

「国民投票の直後に発表される予定のイタリアの銀行の増資は、投票結果が否決となった場合、今思われているよりもさらに難しくなる可能性がある」と、コドーニョ氏は語った。

イタリア01

銀行幹部や当局者らは、最悪のシナリオはモンテパスキの複雑な50億ユーロの増資が失敗して信用不安を引き起こすことだという。

このシナリオの下で、銀行幹部や当局者らは8行すべてが破綻処理の対象になりうるとしている。そして、小銀行の破綻が波紋を広げ、資産で国内最大手のウニクレディトによる来年初めの130億ユーロの増資計画を脅かす事態を恐れている。

銀行家らは、国民投票の結果を問わず、投資家が銀行に新たな資金を投じる動機はほとんどないという。「問題はシエナが増資できるかどうかだ」と、ある政府高官は語った。モンテパスキがイタリアの金融システムを代表するような存在になっていることを映し出している。

イタリア国債とドイツ国債の利回り格差は先週、市場が今後の混乱を織り込む中で2014年10月以来の水準に拡大した。(転載終了)

(参考)
イタリア首相に留任論浮上、国民投票は改憲反対派が優勢(ロイター)
イタリア、早期ユーロ離脱の公算小さい-でも国民投票が心配な理由(ブルームバーグ)

フェリシティ・ジョーンズ
シエナ

ところで、FT紙の記事中で「モンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナ」という銀行が問題視されていますが、「あれ?【映画インフェルノ】の女優さんの役名がシエナだったはず・・・」と確かめてみました。

やはりそうでした。「シエナ・ブルックス」という女医に扮してました。トム・ハンクス扮するラングドン教授と一緒に追手から逃げるのですが・・最後にどんでん返し。あらら・・・奇妙なシンクロですね~。

(過去記事)
三島由紀夫原作「美しい星」が映画化、来年5月に公開(11/26)