株高と円安は報道されていますが、長期金利の上昇にはほとんど触れられていません。米国債が徐々に売られ、金利が上昇(価格は下落)しています。トランプ氏が次期米大統領に決定したことで、インフレの到来を予想した動きです。

15日の日本の債券市場にも異変が起きました。10年物国債金利が一時年0.005%のプラス圏になりました。FRBの米連邦公開市場委員会(FOMC)は12月13日~14日に開かれます。利上げが決定される可能性が高まってきました。

10年物国債の金利は住宅ローンに反映されます。来年はそれを実感することになると思います。国債を買っていないから関係ないというのはお門違いな話でして、様々な経済的影響がじわじわと出てきます。
(参考)
米国債:下落、利回りは10カ月ぶり高水準-ボラティリティが上昇

日本国債にも「トランプ」の影 長期金利一時プラス圏 (11/15 日経)

日本の債券市場に異変が起きた。15日、長期金利が一時年0.005%を付け、プラス圏に浮上した。約2カ月ぶりの高水準に上昇した背景をたどると、米大統領選で予想外の勝利を収めたドナルド・トランプ氏に突き当たる。

大規模なインフラ投資と減税によるトランプ政策でインフレがやってくる――。米大統領選以降、世界の市場では将来のインフレの到来を予想する「株買い・債券売り」が活発化。財政悪化懸念から米長期金利は急上昇し、ドイツやフランスなど欧州国債も金利が上がった。

長期金利

■15日午後に異変

だが、長期金利をゼロ%程度に抑える金融政策を取る日本は「蚊帳の外」。そんな国内債券市場に異変が起きたのは15日午後のことだ。

新発10年債利回りはじりじりと上昇し、一時は前日より0.020%高い(価格は安い)0.005%をつけた。プラス圏に浮上したのは、日銀が長期金利を当面ゼロ%程度に誘導する政策目標を据えた9月21日以来のことだ。

きっかけを作ったのは、財務省が15日正午締め切りで実施した5年物国債入札だ。

■5年債の入札、「予想外の弱さ」

12時45分に発表となった5年債入札結果は、最高落札利回りがマイナス0.150%と、8カ月ぶりの高水準となった。応札額を落札額で割った応札倍率は3.56倍と前回入札(4.31倍)から低下。最低落札価格も事前予想を下回った。「予想外の弱さで低調な入札結果だった」(国内証券)との受け止めが広がった。

 この日の午前の取引では、入札には一定の需要が見込めるだろうとの思惑から相場は堅調さを保っていた。その予想を覆す5年債入札の結果が市場に伝わると、国債需給への不安から5年債以外の国債にも売りが広がり、10年債利回りをプラス圏に押し上げた。

■投資家構造の変化が背景

そもそもなぜ、市場関係者は5年債の入札結果を読み間違えたのか。

ヒントは5年債の投資家構造にある。5年債など中短期債の利回りは国債を大規模に購入する日銀の異次元緩和の影響で、金利のマイナス圏が常態化。必要な利回りを得られなくなったメガバンクや地銀、生保などの国内の投資家は売りに転じていた。

そんな国内投資家が抜けた穴をふさいだのが海外勢だった。日本証券業協会の集計によると海外勢は2016年1~9月に2年債や5年債の中期債を累計で14兆6611億円買っており、日銀を除くと最も存在感のあるプレーヤーとなっていた。

その海外勢がトランプ相場に躍らされているのが今の状況だ。「米国債の急落で損失が膨らんだ海外勢が、日本での債券投資に慎重になった」と東海東京証券の佐野一彦チーフ債券ストラテジストは指摘する。

債券

■債券相場、先行き不透明に

このまま日本の長期金利は上昇を続けるのか。市場では「米国債と歩調を合わせるようにどんどん金利が上がるイメージはない」(外資系証券)という見方が大勢を占める。日銀が10年債を「ゼロ%程度」に誘導する政策を続ける限り、そこから大きくかけ離れるとは考えにくいためだ。

とはいえ、日銀のマイナス金利政策の導入をきっかけに米国債をはじめとする外債投資にシフトしていた銀行や地銀、生保など国内勢は、今回の世界的な金利上昇局面で含み損が膨らんでいる可能性は否定できない。

ある国内証券の担当者はまだ本格的な動きではないと断った上で、こう話した。「含み益が残っている日本国債を売却する動きも出るかもしれない」

そうなれば日本でも金利の上昇に弾みがつきかねない。日銀の金融操作の真価が試される日は案外、近いかもしれない。(転載終了)