(参考)
ロシア・トルコ首脳会談 関係修復を確認(BBC JAPAN)
(過去記事)
トルコでクーデター、エルドアン大統領の誕生日は2月26日

エルドアン大統領をクーデターから救ったのは、反乱軍の「不穏な交信」傍受情報を得たプーチン大統領だった

トルコ軍が2015年11月にロシア軍機を撃墜して以来、ロシアとトルコは断絶状態にあったけれど、ロシアのプーチン大統領とトルコのエルドアン大統領が8月9日、ロシアのサンクトペテルブルクで首脳会談を行い、関係の修復を確認した。

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両国関係に詳しい専門家の情報によると、首脳会談実現のキッカケは、シリアに駐留のロシア軍が7月15日夜、トルコ軍の一部反乱軍による「不穏な交信」を傍受、報告を受けたプーチン大統領が、すぐさま休暇中で南西部のリゾート地マルマリスのホテルにいたエルドアン大統領に電話連絡し「クーデターが起きる」と通報した。

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エルドアン大統領は、クーデターが起こる45分前にヘリコプターで脱出して難を免れ、反乱軍を鎮圧、逮捕した反乱軍将兵に対する厳しい尋問を行い、「クーデター背後に、反乱軍を唆していた米CIAとイスラエル諜報機関モサドがいた事実」を掴んだ。

エルドアン大統領は、プーチン大統領との会談冒頭、感謝とお礼の言葉を述べたという。この首脳会談に対して、米国とEUは、北大西洋条約機構(NATO)崩壊を憂慮している。

トルコは、EUに加盟を許されていないけれど、NATOの一員である。第2次世界大戦が終わり、東欧を影響圏に置いた共産主義のソビエト連邦との冷戦が激しさを増すなかで、英国やフランスが主体となり、北大西洋条約が1949年4月4日に締結され、この条約に基づき、誕生した。

米国を中心とする北米(米国とカナダ)と欧州諸国によって「米国を引き込み、ロシアを締め出し、ドイツを抑え込む」軍事同盟が結成された。(中略)

NATO

トルコは、西アジアのアナトリア半島(小アジア)と東欧のバルカン半島東端の東トラキア地方を領有し、アジアと欧州の2つの大州にまたがる共和国で、地政学的な要衝にあり、1952年以降NATOに加盟している。

ロシアは、帝政ロシア時代から、トルコへの覇権の手を伸ばそうとしてきた国であり、オバマ大統領の東欧でのMD配備、運用に対抗して、トルコと手を結ぶ戦略に乗り出してきた。

このため、米国はじめEU諸国は、プーチン大統領が、エルドアン大統領と手を結び、親密になると、NATO崩壊の引金になりかねないと、恐れているのだ。

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エルドアン大統領を乗せたヘリコプターは、反乱軍のヘリコプターに発見され、追跡されて、あわや銃撃されそうになったとき、突然、反乱軍のヘリコプターが姿を消した。当初、理由がわからなかったが、ロシア空軍機が、エルドアン大統領を助けるために、飛行しているのに気づき、攻撃されるのを恐れて逃げたのではないかと見られている。

反乱軍は7月15日午後10時ごろ、首都アンカラの大統領府公邸や参謀本部などを奇襲、イスタンブールのボスポラス海峡にかかる橋2本を封鎖し、国営テレビ「TRT」を占拠。タクシム広場などに展開。国営放送局「TRT」から、「全権を掌握した。近く新しい憲法を発布する。外交関係と人権は維持される」との声明を出した。

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エルドアン大統領は16日未明、イスタンブールの国際空港に到着し、テレビ局「NTV」に電話をかけて、「スマートフォン」で大統領の映像が入った「クーデターに対抗するために国民は街頭に出よ」と訴えるメッセージを配信するよう要請した。

一方、ユルドゥルム首相は「反乱軍の行動に正統性はない。政府はなお機能している」と声明を出した。これに呼応した多くの国民が、街頭に出て「人間の盾」をつくり、戦車の前に立ちはだかった。

しかし、反乱軍の戦車は、「人間の盾」を砲撃、銃撃することもなく、戦車に乗っている兵士たちは、戦車から姿を現したり、戦車によじ上った一般市民から引きずり出されたりした。それは、「人間の盾」の後ろに、ロシア軍の戦車がズラリいたからだったという。戦車戦になるのを回避したと言われている。

エルドアン大統領指揮下の政府軍と警察部隊が、反乱軍との激しい銃撃戦を繰り広げたところでは、反乱軍は、わずか半日で鎮圧されたという。

ギュレン

エルドアン大統領は「米国に亡命しているイスラム指導者ギュレン師、トルコ国内で強い影響力を持つギュレン運動の支持者がクーデターの背後にいる。彼らは国家への反乱で代償を払うことになる」と非難、警告し、米オバマ大統領に身柄引き渡しを求めてきた。

ギュレン師は1999年から米ペンシルベニア州で亡命生活を送っていて、反乱軍を操っていたと見られている。トルコ議会の代表団は、その主張を裏付ける文書数十箱分を米当局者に手渡したという。これに対して、ギュレン師はクーデターへの関与を再三否定し続けている。

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しかし、1ヶ月を経てもオバマ大統領がなかなか応じないので、しびれを切らしたエルドアン大統領は8月12日までに、ギュレン師について、身柄の引き渡しをオバマ大統領に改めて要求、言うなれば、「最後通告」を突きつけた。

すなわち、トルコ空軍基地からイスラム国(ISIL)空爆に向けて米軍機が飛び立っているのに、しかも、ギュレン師をめぐる問題で、トルコ政府と他の北大西洋条約機構(NATO)加盟国の関係が悪化しているため、オバマ大統領は、苦しい立場に立たされている。エルドアン大統領は、オバマ大統領の足下を見て、「米国は最終的にトルコとギュレン師のどちらを選ぶのか」と決断を迫っているのだ。(転載終了)

1680年当時のオスマン帝国(最大時)
オスマン

http://www.ne.jp/asahi/fuse/abraham/west-asia/turkey/tr-atatulk/tr-atatulk.htmより拝借
(参考) オスマン帝国とは(ニコニコ大百科)

プーチン大統領の深謀遠慮(11/25)より引用

2013年春に起こったキプロスの金融危機の際に、「ロシアはオスマン帝国時代に戻すつもり」と以前のブログで書きました。現在の中東の国境線はイギリス、フランス、ロシア(ロシア革命前)によって秘密裏に画策された【サイクス・ピコ協定】が元々の発端なんですね。(略)

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最近、イスラエルのネタニアフ首相が大人しいですが、プーチン大統領と何か取引があったのでしょうか?ロシアが中東地域を支配下に置くためには、黒海からトルコに上陸することが不可欠なのです。ですから、クリミア半島併合、キプロス危機が起きたのです。ロシアは天然ガスのパイプラインを黒海からトルコに通す「トルコストリーム」を以前からトルコと交渉してきました。

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プーチン大統領の戦略は言わば≪詰将棋≫のようなものでして、焦らず騒がず粛々と・・・気がついた時には「あれ?あの国は何処へ・・・」となっているかもしれません。(引用終了)