ブルゴーニュで会いましょう

 

ブルゴーニュのワイン農家を舞台にした映画ということで、とても観たかった映画なので公開後の最初の休日に早速の鑑賞。

ブルゴーニュには2度行った事があるが、一度目は冬だったので景色がちょっと寂しかった。2度目は4月だったが、やはり葡萄の樹はまだ葉を出しておらず、上のポスターにあるような緑一面という風景は見られなかった。それでも、ボーヌの町郊外に広くどこまでもゆったりと広がる葡萄畑は、春の日差しに包まれてやや煙るような柔らかな風景で、夢の中にいるようで胸が一杯になったもの。大好きなブルゴーニュワインの産地に立っているというだけで、幸せな気持ちになっていたのだ。

 

映画は、主人公のシャルリがワインのテイスティングをしているシーンから始まった。パリでワイン評論家として成功し、新しい評価本を出版し記念パーティがブルゴーニュのクロ・ブージョ城で開かれた。彼はそこで、一人の女性と出会い一夜の関係まで持ってしまうような男として登場だ。都会で成功して富と名誉を得て、女性関係も派手そうなやや傲慢な印象の男。

 

シャルリの実家はブルゴーニュの歴史あるワイン農家。家業を嫌って15年前に家を出たシャルリ、母は亡く、シェフとしてレストランを切り盛りする妹がおり、妹の夫が醸造家として、シャルリの父を手伝いワインを生産している。しかし、跡継ぎと思っていた息子に背かれた父のフランソワはやる気を失っていて実家のワインは評判を落とし販売も不振。今や、倒産しかかっており畑を日本企業か隣の成功しているドメーヌかに売らなければならない瀬戸際に来ていた。

 

パーティのために久しぶりにブルゴーニュに帰り実家を訪れたシャルリは妹に窮状を打ち明けられ、手助けを求められた。実家から抜け出したかったシャルリとはいえ、老いた父親を見捨てることや祖先から伝えられた畑とドメーヌを失うのは、やはり考えられず、自らワイン作りに乗り出し、家業を立て直す決心をしたのだった。

 

というようなストーリーに乗せて、美しいブルゴーニュの風景がこれでもかとスクリーンに映し出され、観ている自分はもう胸いっぱい。ブルゴーニュを訪問した時の感激が蘇り、幸せホルモンが脳内分泌状態(笑) ブルゴーニュは遠くて中々いけないのであるが、今やここ北海道はワイン産地として、ワイン用の葡萄畑があちこちに増えている状況。自分も、ここ何年かは毎年、緑の季節や収穫の季節に幾つかのワイナリーや葡萄農家さんを訪問させて頂いている。映画のブルゴーニュの風景が、身近な余市や空知の葡萄畑と重なり、それがまた胸いっぱいの中身を増やし、幸せ度はさらに高くなるという、なんともいえない感動の鑑賞である。

 

シャルリが実家に戻ってワイン作りをすることになっても、父親のすねた態度は変わらず、協力もない。新しい技術を使わず、昔風の作り方に戻すというシャルリの方針には懐疑的な父親だが、勝手にやってみろと言いながらも、つい気になってあれこれ口を出す。家族でぶつかり合いながら交わすセリフの一つ一つに、気候に左右される農産物である葡萄を育てる難しさや、古くから所有している畑やドメーヌを次の世代に伝えていく思い、畑の管理に対する考え方などが表される。それは、自分が訪れてお話しを伺う北海道のワイン農家さん方の思いとも重なり、胸に響いてくるのだ。

 

映画は、やはりストーリーとしての盛り上げや起伏も必要だから、現実の農家さんや生産者さんから見るとまた違うということもあるかも知れない。自分も生産者さんを訪問しているとはいえ、農業も醸造もほんの上辺しか知らないから、本質的なことは分からないけれども、映画の登場人物たちの言葉には本当に胸を打たれた。自分に取ってはとても良い映画であった。

 

ところで、他の方の感想はどうかなと思って、例によりyahoo映画などのレビューを見てみたのだが、、、、。驚きの低評価!

この後はネタバレになる部分があるので、ご注意ください!

 

 

 

 

 

 

陳腐なありふれた家族の物語。自己中な人々で怒りを覚えた。風景は美しいのだが、、。登場人物の誰にも共感できない。主人公の彼女が結婚相手がいるのに主人公と関係を持ってしまうのがひどい。などなど(^-^;

確かに、まあそれはそうかも、頷けなくもないかな、というような点もありはするし、そもそも人の感想はそれぞれだから、自分が満足したからといってみんながそうとは限らない。

 

例えば、父親はワイン作りに情熱を失っているのに、破産しそうになっても趣味の船作りにのみ精を出し、では畑を売って借金を清算しようという話になると、頑として畑は手放さないと主張する。ならば仕事を熱心にしろよと思うがそれもしない。確かに、理解できにくい男だが、これはよほど息子が家を出たことが堪えていて、心の傷が深く立ち直れていないのだなあ、と自分としてはそう解釈する。

 

冒頭のパーティーでシャルリが出会い一夜をともにしてしまう女性は、その後実家で再会し隣のドメーヌの一人娘で幼なじみのブランシュだったと分かる。ブランシュはこの時婚約者がいたので、それなのにシャルリと関係を持ったのはふしだらともいえるが、その後の展開を見ていくと、おそらく彼女は子供の頃からシャルリを好きだったのだろうと思える。人生にはこんなこともきっと起こるよ、と自分なら言えるな(笑) おっと、自分の経験ではないけどね(^-^;

 

皆さんのレビューを読んで一つ分かったことは、この皆さんはみんなそれほどワイン好きではないな、ということである。中には全く酒が飲めないと書いておられる方もあった。

とすれば、ワインに思い入れが無い人が見るべき映画ではないのかも知れない。

 

シャルリがブランシュから教えて貰った、収穫のタイミングを決める、葡萄の種を噛んだ時の味わい。自分も来年収穫のお手伝いに行けたら、ピノノワールの種を噛んで味わってみよう。

 

ワインを愛する(なんていうのはちとおこがましい気もするが)自分には、最高の感動の映画であった。