実に厚み4.5cmもの文庫本。レヴェレーション・シリーズ中でも最長だ。いやはや。


シリーズの中でも「啓示空間」の続編ということで、星間高速船ノスタルジア・フォー・インフィニティ号の乗組員だったアナ・クーリやイリア・ボリョーワが大活躍する。しかし、主人公はすでに400年くらいも生きている連接脳派の一員、ネビル・クラヴァインだ。短編集「火星の長城」で初登場した大物ね。インフィニティ号に積載されている地獄級の隠匿兵器を手に入れて全人類を救うため、連接脳派を裏切って脱出したクラヴァインの宇宙冒険譚。


この宇宙でなぜ我が人類は孤独なのか。どうして他のヒューマノイドに遭遇しないのか。この謎に挑んだ長い長い物語も、機械族インヒビターが人類を抹殺しようとする理由も一応語られ幕が下ろされたみたい。最後にクラヴァインが到着しインフィニテイ号と船長が終息の場を得た二つの月を持つ惑星は、「銀河北極」で語られたジャグラーの星だったり、「カズムシティ」の主役が登場したり、シリーズの他の中短編に登場する場所や人物も色々とリンクしていて、ファンにはとても楽しい読書だった。


ところで、もちろん自分は日本語・訳で読んでいるので、原文のニュアンスは解らないが、訳者の中原さんは会話文の書分けがすごくイイ。例えば、ウルトラ族の話し方はちょっと古風に武士のような話し方。宇宙を飛びまわる貨物船のオーナーの女の子はアメリカ映画に出てくるイキのいい女の子のような話し方。クラヴァインなら、理知的でまっとうな人柄を彷彿させながら、理想のためには残虐な戦いもこなしてきた苦悩も感じさせる口調だ。

中でも、アナ・クーリとイリア・ボリョーワ(二人とも女性)の会話はいわば男言葉。「そうよ。」とか「・・だわ。」という語尾ではなく、「そうだぞ。」や「気をつけろ。」といったキレのいい会話が続く。それがとってもクールでね!二人のアクションや作戦もダイナミックで、なんてーのかな、ちょいとフェミニズムを感じていい意味で心地よいんだなあ。敵役だけど、そういう意味ではスケイド(これも女性)の仕事のデキルやつ、という感じもステキ。


シリーズ全5冊、堪能できます!