5月か、6月頃だったでしょうか。
何の予告もなく突然にやってきた。
「そういえば前回のショパンコンクールって、二位に日本人の反田さん?が入ってたよなあ。」
ショパコンは存在こそ知っていても、見たことも、そこまで興味もない。
オーケストラやピアニストのコンサートは何度か行ったことあるけど、クラシックも好き、という程度で熱狂的なクラシックファンではない。
ロック、R&B、ヒップホップとかの方メイン。
でも音楽は全般大好きで、jazzでも民謡でも、
どっかの店でミニコンサート的なものがやってたら体が動いちゃう。
海外のオーディション番組で新しいスター誕生を見るのが好き。
ピアノ歴は4ー15才。
中学校では合唱コンクールや卒業式で伴奏引いてた。
でも、別に大好きだったわけでもない。
そんな自分が、上記のように何の因果なのか、突然ショパコンの反田さんの演奏を聴いてみたくなって。
その他のコンテスタントのファイナルも聴いて。
反田さん、本当に上手かったし、私のイメージするいわゆる日本人ぽい演奏と違って、
大胆で、力強くて、でも繊細さもあって、オリジナルで。おお、これは良い! さすがだなーと思った。
普通に素晴らしいじゃん、優勝でいいじゃん。
一位も二位も、どうせ差なんて大してないでしょ?
と思ってとりあえず見てみた、優勝したブルースリウのピアノ協奏曲1番。
.......
❗❗❗❗❗❗❗❗❗❗
何?!
これ!!
全然聴いたことない音。
めっちゃキラキラしてる?
一音一音がこんなに聴こえるピアノとかはじめてなんだが?
一音一音クリアなのに、すっごくなめらかで。
それって同時に表現できるものじゃなくない?
キラキラした音って、大体もっと小さいし、柔らかく繊細な表現になる。
なめらかな音は、連なって一粒一粒ハッキリ聴こえることはない。
なのにこの人の演奏は、フォルテシモで弾くような部分ですらキラキラしてる。
流れるようなパッセージも、ピアニシモの繊細なフレーズもしっかり全ての音が聴こえる。
え、なぜなの?
力強くてエネルギーに溢れてるのに、荒々しいとかじゃなくて、圧倒的に気品がある。
かと思ったら、すんごい繊細なパッセージを奏でる。
めちゃ優雅。
超ドラマティック!
メロドロマ見てるんか?って思うくらいエモーショナル!
こんなピアノ、聴いたことない!
左手のメロディが右手と同じくらい聴こえてきて、重なり合って響き合って、凄まじく美しい旋律になってるんですが...
どうして誰もこういう風に弾かないんだ?
てか、左手の音こんなに美しかったんか?この曲。
これ、オーケストラ引っ張っちゃってない?
オケの演奏引き上げられちゃってない?
ピアノの森でしか見たことなかった演奏、ほんとにあるんか?!
これは何なの!?
何を聴かされてるの?
ショパンてもっと暗くて、じめーっとしてて、
(綺麗なメロディだけどつまんない...)それが私のショパン評。
今まで聴いてたショパンのイメージね。
それが、こんなにも心を揺さぶって、高揚させ、
幸せにしてくれる...!!!
なんだこのショパンはー!!!
こう、強弱の付け方や、間の取り方も、私的に絶妙なんですよね。
すっごく訴えかけてくる。
それでいて、演技っぽさがない、自然体な演奏。
ああ、心で弾いてるんだな。
自身の感じたショパン、でもひとりよがりではない、
ショパンのこの曲の美しさを、本質を、きちんと理解してモノにして、
自分にしかできない形で聴衆と共有しようとしている。
新しいショパン。
でも、決してショパンから外れてないんですよ。
そこが凄い。
多分、
ショパンとはこうあるもの!
自分の好みはこれ!
応援してる人、好みの演奏の人に優勝してほしい!
そんないずれかの気持ちの強い人には、響かないんだろうなと思う。
けどまっさらな気持ちで聴けば...
目の覚めるような、心をつかんで離さない演奏。
持っていたピアニストへのイメージ、
ピアノという楽器が奏でる音楽に対するイメージすら変わった。
聞けば、現地では1次予選から圧倒的な優勝候補で、ファイナルが終わった時点でもほぼ皆が優勝を確信してたと。
なのに、本人が
「優勝するとはまったく思わなかった。
いつでも帰る準備はできていた。
ファイナル行けただけでハッピーだった。
用意してたレパートリーを全部弾けたから。」
なんて言うもんだから、
記者から
「ちょっと待ってよ、皆君が優勝するとずっと思ってたよ。
だから誰も驚かなかった。
なのに本人はまるで期待してなかったって!?」
と言われる始末。
そして採点表を見てみれば、
全ラウンドで全審査員からイエスをもらった唯一のコンテスタント。
まあ、わかる。笑
だってこんなピアニストいないもんね?
審査員の中には彼の演奏を一番良かったことに異論はないと認めながらも、ショパンらしくないと評する人も一部いたけれど、
ポーランド聴衆の方々の評価をたくさん読んでも、彼の演奏を
ショパンの心を理解している!
これがポーランドのショパンだ
って言ってたよー。
本質を捉えてるんですよね。
あのダイナミックでありながらもナチュラルな演奏から、人としても非常にスケールの大きな人なのだろうなと思いましたが、
色々なインタビューを読んで、心をさらに掴まれたのはその驚くほど落ち着いた人間性。
当時20代前半とは思えないほどブレない芯を持っていて、非常に柔らかく穏やかで、少しも飾ったところがない。
そして芸術への洞察、感性が豊かなこと!
本人いわく、いつもjoyful personでoptimisticだという。
けど、決してただ明るく単純な人ってわけじゃなく、海の底のごとく深そうな笑、思慮深さと賢さが垣間見れるんですよね。
どんな相手にもどんな質問にも目を少しもそらさずまっすぐに見据え、自然体で淀みなく応えるブルースさん。
とても魅力的な男性だなと思いました。