2024年3月23日(土)
「容疑者Xの献身」はジャンルとしてはミステリー。
だけどどんなに結末がわかっていても、やっぱり観てしまう。
何が観たいって、やっぱり堤真一の演技に尽きる。
最初の陰鬱な演技、後半の花岡靖子に粘着しているかの演技
そしてラストの慟哭、咆哮、全てが素晴らしい。
今となっては堤真一がどれほど素晴らしい役者かわかっているつもりですが
初めて「容疑者Xの献身」を観るまで、それほどクローズアップしていなかった。
むしろ福山雅治が主演だしとミーハー全開で観てみたけど
観終わってみれば、堤真一の演技だけが胸に焼きついて離れなかった。
無為な毎日に絶望した彼が、明るく笑いあう花岡親子に惹かれたのは理解できる。
そして彼女のために犯罪を隠蔽して救いたいというのも理解できる。
そして殺人の隠蔽という切り札で彼女を支配しようとするのも理解できる。
でもそんな人間らしさを石神は逆手に取って
自分が被った罪の証明にしてしまった。
他人の人生を守るために、自分の人生を投げ捨てるなんて
まるで人間らしさを感じない。まるで理解できない。
彼は一度死んだつもりだったのかな。
だから行き直すことになった人生を、花岡靖子を守るために捧げたのだろうか。
でも「好き」と気持ちを確かめ合ったわけでもなく
一度も抱いたこともない女のために、捧げられるものだろうか。
彼は全くなんの見返りも求めずに罪を償う人生を選んだ。
最後の最後、花岡靖子が「自分も罪を償う」と告げた時
石神は「どうして!!」と初めて感情を爆発させ泣き叫んだ。
この瞬間の堤真一の目の潤み、鼻の膨らみ、唇の震え、
ボキャブラリーの貧しい自分には表現ができないんだけど
この胸の痛みは何度観ても制御できるものじゃない。
この映画においての主演は間違いなく堤真一です。
この映画を観た後、堤真一の映画を漁るように観ました。
「やまとなでしこ」を観ていたはずなのに
なぜこんな素晴らしい役者に気づかなかったのか考えてみたんですけど
おそらく松嶋菜々子の眩い輝きに目が眩んでいたのだという結論になりました。
あの頃の松嶋さんは本当に本人が光っているのかと思うほど輝いていました。
「斉木楠雄のΨ難」の照橋さんのような感じ。笑