余談1 輸出への関税
(1)で、「日米修好通商条約」付録の「貿易章呈」第七則をあげました。
そのなかの第4類を、再掲します。
第四類
上記以外のものは、例外なく20%の関税を納めねばならない。
金銀の類や日本産の品を輸出するときは5%の関税を納めねばならない。
前半については言及しました。
一般品目への関税は20%だって話。
次に、後半に注目します。
さっくり言うと、「輸出品には5%関税をかけるよ」と言ってます。
実は、幕府の当初の要求は、輸出税・輸入税、両方ともに12.5%だったんです。
輸出と輸入、両方に同率の関税を懸けるつもりだったんです。
しかしハリスは、輸出税の無意味さを説明しました。
更に私は、輸出税についても反対した。それは日本の国民の産業に重荷を課するものであり、商人にとっても迷惑で、密貿易の取締に多大の経費を要し、国家の収入に益するところがないことをのべた。それから、私はイギリスと合衆国の例をひいて、世界における大商業国中の二国は、いずれも噸税や輸出税を課していないと述べた。
(中略)
輸入税だけによって彼らの収益をあげることの容易さと、経済的なことを説いて、この部分を終わった。
ハリス『日本滞在記』下、162ページ
もちろん幕府も妥協したのですが、落としどころが5%だったのだと思います。
なぜ幕府は輸出税にこだわったのか。
国外の商品が国内に流入することと同じ程度に、
国内の商品が、外国に流れることを嫌ったからでしょうね。
国内の需要を鑑みることなく、儲けのために外国に輸出されては困るという思考。
実際に、貿易が開始されると、
国内の業者より、外国勢のほうが日本の生糸を高く買ってたから、
そりゃ、そっちに売りたくなる。
だから1860年、五品江戸回送令が出たわけです。
生糸って大事なんだなって、つくづく思います。
生糸については、いずれ、まとめようかと思います。
でもさ、室町、戦国、江戸初期までは、ガチで生糸輸入国だったのに、
よくもまぁ国内生産に励んで、輸出国として世界デビューできたと、
けっこう感慨深く思っています。
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