種子の貯蔵養分
種子の成分
コムギ・イネ・トウモロコシ(イネ科)・ソバ(タデ科)・エンドウ・インゲンマメ・ダイズ・ラッカセイ(マメ科)・アーモンド(バラ科)・ゴマ(ゴマ科)・クリ(ブナ科)の種子の成分。左から水分(水色)・タンパク(濃赤)・脂質(淡黄)・炭水化物(灰)・ミネラル分(白)と並んでいる。炭水化物の多くはデンプンとして含まれる。同様の図とともに、日本食品標準成分表(文部科学省)による(食品成分データベース日本食品標準成分表・資源に関する取組)。

貯蔵養分の組成は種類によって違う。炭水化物(糖質)を主体に貯め込んでいる種子を「デンプン種子(デンプン性種子)[starch seed]」といい、脂質を多めに貯め込んでいる種子を「油種子(脂肪性種子/油糧種子)[oil seed]」という。食用のデンプン種子は穀物と呼ばれる。

種子の成分
イネ科の種子の成分

イネ科(左図)やヒユ科(アマランサスなど)・ソバ(タデ科)などの穀物の種子は炭水化物の比率が高く、70~80%にのぼる。イネ科の食用種子はシリアル[cereal]と呼ばれる。

種子の成分
マメ科の種子の成分

根粒バクテリアとの共生によってタンパク合成に必要な窒素を得る能力が高いマメ科では、種子(マメ科の食用種子はパルス[pulse]と呼ばれる)に含まれるタンパクの比率が高い(左図)。栄養的に互いに補う関係にある穀物と豆類の組み合わせは、農耕の基盤となった。ダイズやナンキンマメ(ラッカセイ)はタンパクに加えて脂質の比率が高い油種子だ。

種子の成分
イネ科・マメ科以外のさまざまな科の種子の成分

種子が含む脂質は植物油[vegetable oil]の原料となる。マメ科の油種子からは大豆油・ピーナツオイルなど、また、左図の油種子からはアーモンドオイル・麻の実オイル・荏胡麻油・芥子油(ポピーシードオイル)・胡麻油・松の実オイルが作られる。他には、ベニバナ油(サフラワー油)・ヒマワリ油・菜種油(キャノーラ油)なども油種子由来だ。

イネ
イネ(イネ科)の種子(玄米)・胚(米糠)・胚と皮を取った種子(精白米)の成分

デンプン種子でも、トウモロコシではデンプン(コーンスターチ)を取った残り滓(コーンミール)からコーン油が、イネでは精白で出る米糠から米糠油が作られる。

種子以外では、アブラヤシ(ヤシ科)の果肉からヤシ油(パーム油)、オリーブ(モクセイ科)の果肉からオリーブオイルが作られる。世界での生産量は、大豆油とヤシ油が飛び抜けて多く、次いで菜種油、ヒマワリ油の順となる。アブラヤシの栽培は、東南アジアにおける森林破壊の主原因の1つだ。

現在では、植物油の多くは食用に使われる。昔は照明用にも植物油が多用されており、ずっとさまざまな植物の種子が油源として使われていた。最近ではバイオディーゼル原料としての利用が増えている。

バイオ燃料[biofuel]はエタノール[ethanol]とバイオディーゼル[biodiesel]がほとんどを占める。前者は穀物(特にトウモロコシ)やサトウキビなどから(糖化+)発酵で作られる。後者はヤシ油・大豆油・菜種油が主な原料で、脂質のグリセロールをメタノールに置換したものだ。

油種子は、炎で着火し、短時間だがろうそくの代わりになる(皮付きのままだと爆ぜることがあるので、皮を剥いた方が良い)。

ベニバナ ベニバナ ベニバナ
ベニバナ(キク科)の果実に着火したところ

ダイズ ダイズ ダイズ
ダイズ(マメ科)の種子に着火したところ

トウモロコシ トウモロコシ
トウモロコシ(イネ科)の種子は炙っても着火せずに焦げていく