人の皮膚は何度で火傷するか、ご存知でしょうか?

実は、43度のものであっても数時間触れ続けると火傷します。
低温火傷というやつですね。

もうちょっと身近な例では、60℃お湯に10秒間触れると火傷します。
80℃の熱湯だと、1~2秒です。

では、サウナの温度はというと、80~100℃です。

なぜ、高温のサウナに入っても人は火傷しないのでしょうか?

その秘密は、熱伝導率(熱伝達率)、さらに言うと体積当たりの熱容量にあります。

聞きなれない言葉かもしれませんが、なるべくわかりやすく解説していきます。



●火傷のメカニズム
火傷とは、どのようなメカニズムで生じるのでしょう?

やけどを負うと、水ぶくれができたり皮膚がただれたりするということはご存知でしょうが、なぜそんなことが起こるのでしょうか?

それは、皮膚のたんぱく質が変性するからです。

変性というのは、ざっくり説明すると分子構造が変化すること。

タンパク質は分子レベルで見ると複雑な三次元構造をしているのですが、その一部が熱により変化して(壊れて)本来の機能を果たせなくなるのです。

ちなみに、火や熱湯に触れるなど、熱によりタンパク質が変性することを熱変性といいます。

本記事で注目しているのはこの熱変性についてです。



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100度のサウナで火傷しない科学的な理由と、やけどする二つの可能性
2018.10.11科学技術全般サウナ, 原理, 火傷
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人の皮膚は何度で火傷するか、ご存知でしょうか?

実は、43度のものであっても数時間触れ続けると火傷します。
低温火傷というやつですね。

もうちょっと身近な例では、60℃お湯に10秒間触れると火傷します。
80℃の熱湯だと、1~2秒です。

では、サウナの温度はというと、80~100℃です。

なぜ、高温のサウナに入っても人は火傷しないのでしょうか?

その秘密は、熱伝導率(熱伝達率)、さらに言うと体積当たりの熱容量にあります。

聞きなれない言葉かもしれませんが、なるべくわかりやすく解説していきます。

目次 
1. 火傷のメカニズム
2. 高温のサウナで火傷しない理由(通常説明版)
3. 高温のサウナで火傷しない真の理由
4. サウナで火傷する方法
4.1. サウナで火傷する方法①:長時間居続ける
4.2. サウナで火傷する方法②:サーキュレータ(扇風機)を使う
5. まとめ

 
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火傷のメカニズム
火傷とは、どのようなメカニズムで生じるのでしょう?

やけどを負うと、水ぶくれができたり皮膚がただれたりするということはご存知でしょうが、なぜそんなことが起こるのでしょうか?

それは、皮膚のたんぱく質が変性するからです。

変性というのは、ざっくり説明すると分子構造が変化すること。

タンパク質は分子レベルで見ると複雑な三次元構造をしているのですが、その一部が熱により変化して(壊れて)本来の機能を果たせなくなるのです。

ちなみに、火や熱湯に触れるなど、熱によりタンパク質が変性することを熱変性といいます。

本記事で注目しているのはこの熱変性についてです。

●高温のサウナで火傷しない理由(通常説明版)

高温のサウナで火傷しない理由は、冒頭でも少し触れましたが空気の熱伝導率が低いことが関係します。

熱伝導率というのは、熱の伝わりやすさのことです。

例えば、金属は熱伝導率が高く、銅だと大体400[W/mK]という値です。
([W/mK]はここでは熱の伝わりやすさの単位という理解で十分です。)

金属の熱伝導率が高い理由は、金属に沢山存在する自由電子が熱を輸送するからなのですが、ここでは深入りはしません。

一方で、水の熱伝導率はというと、だいたい0.6[W/mK]ぐらいです。
銅とはケタが全然違いますね。

では空気はどうでしょうか?
ご想像の通り、水よりも更に小さく0.025[W/mK]ぐらいです。

なんと、空気は水に対して熱が伝わりやすさが1/20程度なのです!

だから、サウナではやけどしないのです!

・・・という一般的に言われている説明だけでは不十分です!!


●高温のサウナで火傷しない真の理由

サウナでやけどしない本当の理由は、熱伝導率のほかに空気の体積当たりの熱容量の小ささにあります。

体積当たりの熱容量というのは、1m3の体積(空間)の物質を1度上げるのに必要な熱量(密度[kg/m3]に比熱[J/kgK]をかけたもの)のことであり、単位で表すと[J/m3K]となります。

空気の密度は水の密度に比べて数百分の1しかないので、体積当たりの熱容量(温度変化のしやすさ)も数百分の1とかです。
人間の体の70%以上は水でできているので、肌(水が主成分)に触れた空気はあっという間に肌の温度付近にまで冷やされます。

一方で、熱容量が空気に対して数百倍も大きい肌(水)は、空気から受け取った熱量ごときでは殆ど温度変化はしません。

さらに、空気は熱伝導率が低いため、周りの100度の空気から肌近傍の空気へと熱がなかなか伝わりません。

従って、サウナ内で体が100℃の空気におおわれていても、体表面温度はじわじわとしか上がらないため火傷には至らないのです。


サウナで火傷する方法
では、高温のサウナで火傷をすることは絶対に無いのでしょうか?

結論から言うと、原理的には火傷できます(笑)

しかも、やり方は二つもあります



サウナで火傷する方法①:長時間居続ける
上の説明では、体表面温度は少ししか上がらないと書きましたが、熱は必ず温度が高いものから低いものへと伝わります。

これは絶対不変の法則です!

従って、サウナでは高温の空気から低温の体内へとじわじわと熱が伝わり続けます。

その熱の伝わる速度が遅いから、サウナに入ってもすぐにはやけどを負わないだけで、長時間居続けると体表面温度は上昇し続け、原理的にはやがてやけどに至ります。

実際に、ジムのサウナで二時間失神し、足に火傷を負う事故が海外では発生しております。

意識があれば、火傷をする前に精神の限界がきてサウナから出るためやけどを負うには至らないのですが、意識がないとこのような不幸なことが起こり得ます。

サウナに入るのは体調の良いときに限り、決して無理はしないようにしましょう。



サウナで火傷する方法②:サーキュレータ(扇風機)を使う

サウナで火傷する方法の二つ目は、ずばりサーキュレータ(扇風機)を使って体に流速の早い熱風をガンガン当てることです。

これにより、以下二つの効果が期待(?)できます。

①対流熱伝達率が向上する

②100度の新鮮な(?)空気を肌近傍に供給し続けられる

一つ目の、対流熱伝達率とは、空気自体が動く(対流といいます)ことにより、熱が伝わりやすくなる程度を表します。

扇風機の風が涼しく感じるのは、流速が早いほど対流熱伝達率が向上し、体表面から熱を奪いやすくなるためです。

普通の空気は体温よりも低いため扇風機の風は涼しく感じますが、サウナの熱い空気だと逆により一層熱く感じます。

二つ目については、熱容量の話にも関連します。
空気の熱容量が小さい欠点は、高温の空気を外からガンガン供給することで物理的に補おうという作戦です。

試算はしておりませんが、扇風機よりも局所的に大量の風を当てるサーキュレータを用いれば、これら二つの効果により、あっという間に火傷できることでしょう。

くれぐれも実践だけはしないで下さい!!



●まとめ
サウナで普通はやけどをしない科学的な理由と、やけどをしてしまう可能性もあるということを、注意喚起のために解説いたしました。
(ネット上にはこのような情報は殆ど見られなかったためです)

サウナに入るときは、やけどの可能性もあるということを思い出していただき、決して無理はしないようにして下さい。

また、もし気を失いかけていたり無理をしている人がいたら、すぐに助けてあげてください。


サウナで火傷しない理由について解説されています。