NHKスペシャルで、政治討論をやっていたのでしばらく見ていた。日本の政治漂流は何が原因か?というテーマ。その中で、野田政権の掲げる復興のための増税について討論が行われていた。ツイッターやインターネットを通じて国民の意見もテロップで流されていた(実は、私も意見を送ったが表示されなかった)。

 増税賛成派の意見の多くは、借金が膨大になっているから何とかせねばならぬ、といった趣旨のものが多かった。私も同意見だ。一方、増税反対派の意見は、今の苦しい生活で増税なんてありえない、とか増税の前に無駄削減をまずやれ、という意見が多かった。

 生活が苦しいから増税に反対だ、という意見はよくわかる。「衣食足るれば礼節を知る」という。生活が苦しいのに国家の借金のことなど考えていられないというのは尤もな意見だ。ただ、無駄をカットしてから増税せよ、という意見はよくわからない。無駄をカットせよといってもどの程度、どんな分野の無駄をカットすればよいのか?確かに収益性も公益性もない、よくわからない事業に税金が流されていることはありそうだが、そういった類のことをつきつめていればキリがない。昨今の事業仕分けで、無駄な事業はある程度カットできたはずだ。

 私が、最も恐れるのは、増税がいつまでたっても現実化しないということだ。増税の前に歳出カットといってもどの程度まで歳出を切り詰めればよいのか?小泉構造改革や、安倍内閣以降の公務員制度改革で、公務員人件費も削減されてきたし、無駄はカットされてきたはずだ。一日でも早く、一秒でも早く増税をしないと、日本の国庫はもたない。増税反対派は、錦の御旗のように「増税の前に無駄をなくせ」と言うが、私は彼らのいう無駄の定義をまず知りたい。

 私は何も財務省の肩を持っているわけではないし、歳出削減が不必要だと言っているわけではない。増税を早く行い、政治停滞を打破してほしいと言っている。

 歳出削減は、増税の後で徹底的にやればいいだろう。私も増税に賛成だが、それは財政の窮状が見ていられないからである。つまりやむなく賛成するわけである。やむなく受け入れるわけだから、増税の後、国家の税金の使い道についていっそう目を光らせるのは何も私だけではないだろう。増税をしてもなお、無駄な天下り団体に多額の税金がつぎこまれたなら、許せるだろうか?こういう時に歳出削減の機運が高まると思う。

 「増税の前に無駄削減を」ではなく、「無駄削減の前に増税を」。これが政治停滞を破る手段ではないか。