遠州入門―浜松市 経田野のべんけい狐
◆昔 昔の話
今の浜松市浜名区横須賀 高畑の辺りの雑木林があった
そこに娘に化けるのが得意ないたずら狐が住み着き
多くの人がだまされた
暑い夏の日 汗びっしょりの若者は
「近くに泳ぐのに手頃な川がある」
と案内された
「こんな所にそんな川があったっけ」
と思いながらもついて行くと目の前に真っ白な水面が広がっていた
「これはありがたい」
と着物を脱いで泳いでいると
「いい大人がそば畑で何を暴れてる 花が台無しだ」
と村人に声を掛けられ我に帰った
「体にいい化粧水」
を勧められて塗った人もいた
「肥料を全身に塗るなんて何かのおまじないか」
と言われた時 正気に戻ったものの後の祭り
しばらく匂いが取れなかった
村で騙される人は日に日に増えていった
娘が騙す時はいつも弁慶がすりの着物を着ていた
ある日の夕方おじいさんが油を買いに町に出かけた
手間どって遅くなったので近道の林を通って帰ることにした
すると娘が通りかかり 知っている人かなと
思って近づくと声を掛けられた
「おじいさん家の蔵のお金を内緒で出したいんだけど
女一人の力では無理 手伝ってくれればお礼をします」
困っている人を助けるのは当然のこと
ましてや簡単な手助けでお礼を貰えるなら断る理由はない
娘と二人で大きな屋敷に行った 蔵に入ると娘が何か投げて来た
「ほら100両 それ200両」
おじいさんは驚きつつもお金をかき集めた
翌朝村人が林の道を歩いていると墓地におじいさんがいて
骨を集めて大喜びしていた
「おい 大丈夫か?」
と声を掛けるとおじいさんは手にした骨を見直した
「か 金じゃない そういえばあの娘
弁慶がすりを着ていた 狐に騙された」
狐のいたずらは際限なくなり
林を通る人はすっかり減ってしまった
ある日のこと 村のために狐退治をするという侍が現れた
林で狐を待ったが何日過ぎても出て来なかった
「恐れをなしたか 今日こそ見つけてやっつけるぞ」
侍は毎日欠かさず林に出かけて行った
「今日も出ん 今日も出ん 今日出んの」
とつぶやく侍がいたずら狐をこらしめようと
半年も通い続けた場所を
「経田野(きょうでんの)」
と呼ぶようになった
(^。^)y-.。o○
bye-bye !(^^)!