遠州入門ー浜松市 片身の魚 | 爺さんの徒然日記

遠州入門ー浜松市 片身の魚

◆ある日 例によって 戦に敗れた徳川家康は

家来と共に佐鳴湖のほとりまで逃げて来た 

 

 

権現谷(浜松市中央区富塚町)にある佐鳴湖につながる池で

ようやく一息着つくことができた

「ひどい目に遭ったがなんとか生き延びた 

腹が減っては戦ができぬ 何か腹に入れて仕切り直しだ」 

すると 家康の目の前で突然大きな魚が飛び跳ねた 

「皆の者あの大きく跳ねた魚を見たか 

驚くほど高く飛び跳ねた 今日の戦で全てが終わった訳ではない 

皆の者 元気を出すのだ あの大きな魚の勢いを見習いたいものだ 

あの魚を捕えて食べればきっと運が向くはずだ」 

 

 

家康の話を聞いた家来たちは急いで池に入って

飛び跳ねた魚を捕まえた 生きたまま差し出すと家康は大喜びで

「おおっ 見事な魚だ 食べればきっと精が付くぞ」

料理上手な家来が魚の片身を切ると家康は満足そうに食べ始めた 

一口 二口と食べ進むにつれて疲れ果てていた家康に生気が蘇っていった

「これを食べれば百人力だ 遠慮しなくてもいい 皆も一口どうだ」

声を掛けられて食べた家来も疲れが吹っ飛んだ 

 

 

その時 谷の入り口が突然騒がしくなってきた

「た 大変です 敵が攻めてきました」

「気付かれる前にこの場所を離れましょう」

家来の話を聞いた家康は

魚を食べている途中であったが急いで逃げることした

「片身を切った魚でもまだ死んではいない

 運がよければ生き延びてくれ」

池にそっと放すと片身になった魚は底の方に沈んでいった 

「やはり片身では無理か」と思っていると 

体をひらひらさせながら泳ぎだした 

 

 

「何という生命力だ 見上げたものだ 

わしも大けがを負ったわけではないのにここで命を粗末にできない 

何としても生き延びて天下を目指そう」

家康は追手を振り切って城に駆け戻ることができた 


 

池に放たれた魚は片身のまま生き続け

魚が泳ぐ池は『片身の池』と呼ばれるようになり 

その後 片身の魚は佐鳴湖まで泳いで行って

主になったということである

 

(^。^)y-.。o○

 

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