NOCTICRONの接吻 2 | 光と風の中の防波堤で …











十二月ノ内 果ての月


いつしか街は幸ひにあふれ
赤や
金や緑のひかりにさんざめく


あらゆるもののうえに
そうして誰れのこころにも


鐘の音はしずかに秘そやかに


深々とさやかに積もってゆく




















Angel Chime ~


おさなごころに沁みた天使のささやき





















時に


ファインダーの向こうの異(い)なる世界へ


戻れなくなりそうな危うさと恍惚


















さてと …




















いと小さきクリスマスっぽい多肉なきみ





















いつか誰れかが


小瓶にとじこめたしあわせのかけら


いつか誰れかに


小瓶からこぼれるちいさな光










そうだ


図書館いこう




















そらにはちりのやうに小鳥がとび
かげろふや青いギリシヤ文字は
せはしく野はらの雪に燃えます




















パツセン大街道のひのきからは
凍つたしづくが燦々(さんさん)と降り
銀河ステーシヨンの遠方シグナルも
けさはまつ赤(か)に澱んでゐます



















川はどんどん氷(ザエ)を流してゐるのに
みんなは生(なま)ゴムの長靴をはき
狐や犬の毛皮を着て
陶器の露店をひやかしたり



















ぶらさがつた章魚(たこ)を品さだめしたりする
あのにぎやかな土沢の冬の市日(いちび)です
(はんの木とまばゆい雲のアルコホル
あすこにやどりぎの黄金のゴールが
さめざめとしてひかつてもいい)





















あゝ Josef Pasternack の指揮する
この冬の銀河軽便鉄道は
幾重のあえかな氷をくぐり





















(でんしんばしらの赤い碍子と松の森)
にせものの金のメタルをぶらさげて
茶いろの瞳をりんと張り




















つめたく青らむ天椀の下
うららかな雪の台地を急ぐもの
(窓のガラスの氷の羊歯は
だんだん白い湯気にかはる)




















パツセン大街道のひのきから
しづくは燃えていちめんに降り
はねあがる青い枝や
紅玉やトパースまたいろいろのスペクトルや






















もうまるで市場のやうな盛んな取引です






宮沢賢治  「 冬と銀河ステーション 」

( 『 心象スケッチ 春と修羅 』 より )






















「 NOCTICRONの接吻 」












~ f i n