風は草原をわたり、彼女の髪をかすかに揺らせて雑木林に抜けていった。
梢の葉がさらさらと音を立て、遠くの方で犬の鳴く声が聞こえた。
『 ノルウェイの森 』 村上春樹
ご注文はお決まりですか
その人はきれいにほほ笑んでそう言った
僕はつめたいアールグレイを … といいかけて …
さてと…
夜の帳が下りるまでのほんの少しの時間
僕はcameraを手に、雨の滴る庭で過ごした
ゆくりなく
僕の意識は妄想の流砂に飲み込まれ …
成すすべのない恋の狂おしさに、悶え身惑う禁断の果実
しとどに濡れた臙脂色( えんじいろ )のぷっくりとした実は、
雨の滴をしたたらせてらてら光っている
見るからに豊潤な甘さを与えてくれそうな色とて、
ねっとり舌にからみつくあの悦楽にはほど遠い
あとすこし …
あともう …
翡翠色に透きとおるヤマボウシの葉っぱが好き
まろやかな白い花びらの落ちたヤマボウシの実さえ好き
その実が赤く色づいてなくとも好き
あともうすこし …
とろとろと熾火のような恋心に煮詰められ、
深遠なる紫紺にその身を染めあげ熟すがいい
やわらかく熟れた実から滴りおちる黒き果汁は、
僕のこの両の手で余さず掬いとってあげるから
「 またひとしきり袖の雨、晴間はしばしなかりけり 」
『 桐一葉 』より 坪内逍遥
夢二郷土美術館での至福のひとときのあと、
館内にある静かなカフェでお茶を …
ご注文はお決まりですか?
二人掛けのテーブルに座りメニューを見る僕に、
その人はきれいにほほ笑みやさしくそう言った
夢二の描いた女性の着物のblue …
大好きなアールグレイのmallow blue …
僕はつめたいアールグレイを … といいかけて …
ん?
白桃 … ダージリン … ?
そうして僕は
おまたせしました
きれいなほほ笑みの人はそう言い、
僕の前にその素敵な飲み物をそっと置いた
NIKKOの美しいblueのカップからは、
ふんわりと立ちのぼる桃の香り
澄んだセピア色の湖水が山水の情景と重なり、
空を飛ぶ二羽の鳳凰に哀愁がただよう
( あぁ … いい香り … )
ありがとう と僕
ごゆっくりどうぞ と彼女
そうして猫舌の男は …
その熱く香しい飲み物に息を吹きかけ、
夢二に思いを馳せ、ゆっくりと味わいます
7月 梅雨の晴れ間のちいさな逃避行
澄んだ青い空を吹き渡るmint blue のあまい風
宙を舞うトンボの翅がきらきらと星のように瞬いて
こんなにいい天気なら …
黒寅と来ればよかったかな
でも今日は …
うん 車できてよかった
また会いに来よう
「 ゆめじ 和紙てーぷ 」
いつかどこかで見た、誰もいないきれいな海の色
カットする位置 気をつけないとね
「 Blue mint blue 」
~ f i n










