途中、誰かがかすかに叫ぶ声がした
あたりを見回しても誰もいない・・・
すると、また聞こえてきた
『助けて~、助けて~』
えっ!?今度ははっきり聞こえた!上の方から!
見上げると、3階建ての家の2階のベランダから 年配の女性が叫んでいる
『助けて~、助けて~』
なんとも力のない声で・・・
もうその時、すっかり日は落ちて暗闇でした
でも、その女性が母と同じくらいの歳だろうなという事はわかりました
私はびっくりして立ち止まり
『どうしたんですか!?』と叫びました
するとその女性は
『火事!火事なのー!!』
私 『火事!!!家の中が!?電話しましたかー!?
消防車は呼びましたかー!?』
女性 『電話したーー!!』
私 『降りてこれませんか!!』
女性 『火が!火があちこちいっぱいなのー!』
私は家を見回した
2階部分と3階部分の窓からは、部屋の明かりがもれている
燃え盛るような火はまだ見えていない
(どうしよう・・・)
頭フル回転で、助けに入るべきか消防車がくるのを待つか
必死に考えていた
娘は固まってしまっていた
なおも女性は、助けてー助けてー!と叫んでいる
私が(もうダメだ!ほっとけない!) 家へ飛び込もうとした時・・・
その横をこちらを見ながら通りかかるおばあちゃんがいた
顔を見ると、かすかに笑っている
えっ!?なんで笑ってるの!?
何!?この状況?助けを呼んでる人がおんねんで?
私の頭は混乱状態!
すると・・・助けを叫ぶその女性の家の中から男性の声がした
『もうええから!わかったから、早く家に入れ!!』というような声が・・・
そこでやっと、事の成り行きが把握できた私・・・ガクッとなった
認知症、痴呆症?・・・・・・・胸が苦しくなった
やっと、通りかかったおばあちゃんが笑っていたのもわかった
きっと近所のおばあちゃんでよく知ってたんだろう
私はあの女性と家族の気持ちを考えていました
そして母のことを・・・
固まっていた娘に、私は『行こうか・・・』と言い、その場を離れました
娘は複雑な顔をして、『どういうことなん?』と私に聞いてきました
説明をしながら私は泣きそうで・・・、泣くのを堪えていました
すぐに母の顔が浮かびあがってきた
くも膜下出血で倒れたあと、命は取り留めたものの
日に日に記憶が薄れ、話しかけても返ってくる言葉はなく、
ただただ子供のような笑顔で私を見つめ、
だんだん何もかもがわからなくなっていく母を・・・・・・・
その女性に母を重ねて苦しくて苦しくて・・・
もしかしたら今頃、母もそうなっていたかもしれない
今、この記事を書いている最中に母から電話があった
今日は弟の末っ子の入園式
今、幼稚園に来ているのだが、孫は教室に入り先生とお話
弟夫婦はPTA総会で集会室
一人になった母は時間を持て余し、私に電話をしてきたっ
たわいもない話をして電話をきった
もぉっ!
本当に・・・本当に・・・ 元気になって良かったっ!なぁ?そうやろ? お母ちゃんっ
