親しくさせていただいているブロガーさんが、
小説を出版されたので、さっそく購入して拝読いたしました。
この小説の作者は境愛子さん。
初めての出版だそうですが、なかなか素敵で心温まる物語でした。

著者 境 愛子
発行所 銀河書籍
定価 1500円+税(1650円)
(ご購入は、Amazonのサイトにて)
本のタイトルは「心海の詠」。
(*タイトルが読めないので、ルビを打ってほしいです~)
カバーのイラストは、著者とAIの合作のようで、物語の一場面を切り取ったような素敵な出来栄えです。
主人公の内に秘めた思いが、なんとなく背中から伝わってきそうな絵ですね。
この本には、それぞれタイプの違う3つの物語が収容されています。
1冊で3倍楽しめるお得な内容ですよ。
作者のブログはコチラ。
《6/1》誕生日と出版【心海の詠】発売‼️宜しくお願いいたします | 里脇まうかのごちゃ混ぜBOX

1、僕と彼女の音楽隊
主人公の「マサ」は、子供の頃に父親を亡くし、そのうえ母親までがマサを置いたまま出て行ってしまい、一人ぼっちになってしまいます。
その後、親戚の叔父さんに育てられますが、高校を卒業すると、
自分の居場所を探す旅に出かけます。18の春です。
そして行く先々でバイトをしながら、親切な人々に支えられ、少しづつ成長していきます。
旅先での恋。そして愛犬ハルとの出会い。
出会いや別れを繰り返して、ようやくマサは自分の居場所を見つけます。
主人公マサの青年期から老人になるまでの一生を描いた心温まるサクセスストーリーです。
優しくて強い意志を持った主人公で、好感度は高いです。
不幸せな状態から、様々な出会いと経験を経て、少しづつ幸せに向かって行く過程が読んでいてなかなか楽しいです。
かなり長編大作になりそうな物語を実にあっさりと描いていますが、書き直せばNHKの朝ドラにも使えそうな物語でもあります。
また犬やネコ、文鳥など、動物の使い方が良いアクセントになっているようにも思いました。
2、もう一度あの場所に
主人公「由衣」は中学生の時、朝の通学時に親友の「玲」を交通事故で亡くし、自らも大怪我をしてしまいました。
さらに事故のショックで記憶が曖昧になり、亡くなった玲の母親から「娘の最後の様子を教えて」と訊かれても、話すことができなくなっていました。
その後、転校先で起きた、事件、事故により徐々に記憶を取り戻していきますが……。
些細な悪ふざけから、重大な事故や事件につながるストーリーで、ずっと抱え込んでしまったトラウマに由衣は苦しめられます。
そして記憶を取り戻した時に、思い出した衝撃の真実....
由衣はどう自らの罪に向き合って、それを乗り越えていくのか。
十代の少女が抱えるにはあまりにも重い問題ですが、それでも記憶の喪失、孤独、そして、再生が純文学調で語られる展開はなかなかのものです。
難しいテーマへのチャレンジでしたね。
3、青鯨の詠う夜
この物語の原案は、
ギタリストでもあり、音楽技術者でもあり、作曲、編曲もし、映画音楽も担当するマルチ音楽家、川島隆臣氏の「青鯨の哭いた夜」のCDに感銘を受け、CDに付いていた短いストーリーから想像を膨らませて書いた作品です。
魔女シモーヌと人間アランの恋を描いた作品ですが、魔界に、古くから伝わる『三つの大罪』が、シモーヌとアランの運命を揺るがせます。
最後は、掟を破ったことで父親魔王の逆鱗に触れ、青鯨にされて深海に閉じ込められてしまうシモーヌ。
心から人を愛して、たとえそれが結ばれることがなくても、主人公は幸せなのでしょうか。
深い愛が祈りに変わることで、当事者は満足できるのでしょうか。
「愛」とは「幸せ」とはを読者に問いかけるファンタジーでありラブストーリーでもあります。
「魔界」と「悪魔界」と「魔法界」は、それぞれどう違うのか。あるいは神様のいる神話の世界となら?
SFやファンタジーの世界観は複雑怪奇ですよね。
私も川島氏のCDを聞かせていただき、これをドラマ化するのは、ものすごく難しいな、と感じたことがありました。
むしろ小説よりも、絵本とか三幕構成の舞台にして、作者から観客に向けて何らかのメッセージを伝える作風にした方がいいのかな、とも思います。
だけど難しい素材に対して、ナイスチャレンジだったと思います。

作品を読ませていただいて、まず感じたのは「美しい日本語を書かれる方だなあ」と感心いたしました。
作者にとって初の出版ということでしたが、普段から文章をよく書かれているためか、初めてとは思えないほど文章力が巧みで、随分慣れておられると思いました。
キャラクターの描写やストーリー作りも上手いです。
逆に説明文が多く、セリフのやり取りが少ないのを感じました。
これは私の作品にも言えることなので、自分のことを差し置いて人にはあまり言いにくいのですけどね。
あとドラマの勉強をされると、芝居場が書けるようになります。
芝居場とは、ここいちばんの感情が動く正念場のシーンです。
何となく書けているようにも思いますが、計算されて書かれているようではなさそうで、足りていないように感じました。
ここを書ける書けないが、プロとアマの境目のような気がします。
気がつけば、すっかり長ブログになってしまいました。
すみません。
いろいろ書きましたが、作者の優しい人柄はよく出ていて、楽しんで読ませていただきましたよ。
初出版にしては、3作品ともプロでも手を焼くほどの難しい素材やテーマにチャレンジされたようで、本当にお疲れ様でした。
おかげさまで隙間時間の良き読書となりました。
