お久しぶりです...。

 

腕時計(以下時計とする)の夜光…といえば93年に根本特殊化学株式会社によって開発されたN夜光(ルミノーバ)を思い出される方が多いでしょう。夜光というのは基本的には無害です。しかし、ちょっとアブナイ夜光もあります。それを紹介しようと思います。

 

トリチウム夜光?いえいえ、ラジウム夜光です。

 

そもそもラジウム夜光とは・・・キュリー夫人が発見した放射線元素であるラジウムを使用した夜光のことで、放射能の崩壊により発生する光を活用するものです。光を当てずとも光る自発光物質として脚光を浴びました。夜光だけではなく、様々なものに使われてきました。健康に良いという触れ込みで摂取していた時期も・・・。当然そんなことはなく、死に直結しかねない物質でした。当時はラジウム夜光を針や文字盤に塗りつける作業員(通称ラジウムガール)が、放射線障害で亡くなり大きな社会問題となりました。

 

 

 

 

 

 

このラジウム夜光、現代となってはかなり曲者です。修理に出そうにも引き受けてくれる会社は極めて少ないです。理由は明白。半減期が異様に長く、現在でも作られた当時の放射線量を放っているから・・・。つまりは被曝するからです。誰しもそんな被曝はしたくないので仕方ないですね。

 

このラジウム夜光や、後のトリチウム夜光を使用した時計は、ヴィンテージ時計の価値を増幅するものとして知られています。これらの夜光は、経年劣化することで色が茶色っぽく変色します。この変色を「焼ける」と表現します。文字通り、何かを焼いたときの色に似ているからでしょう。



↑最近入手した夜光モリモリチョモランマなハミルトン

 


↑うちで以前取り扱ったAOPA(全米パイロット協会)のエルジン手巻き、かなりレアです。


このような焼けは基本的には好意的にとらえられ、付加価値が付きます。劣化に付加価値?と思われるかもしれませんが、こんな世界なのです。また、焼けがあるということは文字盤を書き換えていないことの証左にもなります。オリジナルを重視するコレクターも喜びます。気持ちは分かります。塗りや加工では味わえないきつね色の夜光は大変魅力的です。美しいものにはトゲがある。そんな感じかなと思います。まあ年中つけるのでなければ大丈夫でしょう。個体にもよりますが、20μ㏜(マイクロシーベルト)以下だと思います。



↑この方のレストアは結構面白いのでオススメです。放射性物質を含む時計をどう扱うか…分かります。


皆さんも美しいラジウム夜光時計、ゲットじゃぞ・・・