「ガタンガタン...」
電車がホームに入ったと同時に、ある男性が腕時計を見た。
午後三時三十八分、電車は定刻に到着した。
人が電車から降りるのを待って、そして彼は電車に乗り、自分の席を探していた。
37番。席には誰もいない。
彼は荷物を置くのではなく、まずは周りを焦って見回っていて、そして携帯を取り出した。
電話は繋がらなかったみたい。
荷物を席に置いて、彼は慌てて多数の車両を抜けて、ある車掌を見つけた。
「あのう、どうかしましたか?」
「すみません、僕の友人はすでに前の駅でこの電車に乗ったのはずですが、席で彼女が見当たりませんでした。」
「トイレに行ったのではありませんか?」
「それはありえないです。」
彼は不安な顔をして言う。
「彼女は目が見えません。」

二日前。
綿の研究室に、ひとつの手紙が届いた。
綿は生物研究をしていながら、警察の事件調査も手伝っているので、知名度をあげていた。
それ故、彼の事情を知ってる人も増えた。
そんな状況で、この手紙が綿のところに辿り着いた。
「うん...?北海度の室蘭から?」
遠いところから来た手紙を開き、綿は内容より、まずは署名を見ていた。
「...白柳研究室?なぁ、若宮、室蘭の白柳研究室って知ってる?」
隣の机から、一人の少年が顔を上げて、頭を振る。
「臨海実験所の研究室ですか?」
「臨海...あ、海藻を研究してるよね?」
「はい、でも白柳は聞いたことがありませんでした。」
綿は頷き、そして手紙の内容を見る。
一分後、綿は椅子から跳ね起きた。
「朝田さん...?」
「やな!今すぐやなに連絡しなくちゃ!」
綿は喜んでいる様子で、慌てて電話をかける。

朝田さんへ:
急な手紙、申し訳ございませんでした。どうしてもこの成果をあなたに伝えたくて、勝手に手紙を送りました。どうかお許しを。
僕は白柳恵弦と申します。室蘭臨海実験所所属の、白柳研究室の担当者として、海藻と医学の連携を研究しています。
僕は色んなところからあなたの事情を知りましたので、この成果を見つけた瞬間、待ち切れずにあなたへの手紙を書きました。
あなたの奥様の目を治療できる薬ができました。
ご存知の通り、古い時代から、井戸の水で目を洗うと、目の病を治療できるという言い伝えがあります。これは大抵、迷信に似たようなものに過ぎないので、こっちも経費はあまり多くなかったです。
しかし一週間前、僕たちはある井戸の底で、ある藻類を見つけました。適当な環境で育てば、自然にある物質を分泌して、そしてその物質は、視神経の再生を加速します。
研究の結果がわかって、僕はすぐこの手紙を送りました。どうか、奥様と共に来て頂いてくれませんか?詳しい状況を説明させて頂きます。
この週末は二日とも時間がありますので、もし来てくれるなら、いつでも研究室へ来てください。
お待ちしております。
白柳恵弦。
白柳研究室‧室蘭臨海実験所。

「...わかった。今日は木曜日だから、土曜日で?」
「うん、その研究を理解するには、二日かかるかもしれない。」
「えっと...まずい、私土曜日は名瀬家に行く予定だった。」
「ホタルさんのところ...?」
「うん、ほら...あの人が。」
綿はカレンダーを見る。
あの人が出る日は、たしか三月の真ん中。今はもう二月に入った。
「わかった。そこで電車に乗るのか?」
「うん。」
「じゃあ隣の席を予約する。そうだ、君はそれで電車に乗れるのか?」
「大丈夫、ホタルを頼んで、車掌さんに言ってもらう。」
「わかった。じゃあ午後三時くらいの電車でいい。三時間かかるから。」
「大丈夫だよ、間に合わなかったら、月曜日の授業を休めばいいんだ。」
「それはダメ。じゃあ、チケットは家に帰ったら渡す。」
「わかった。」
電話を切って、綿は少し微笑んだ。
もしこの白柳が言ってることが本当だったら、やなの目が治るのかもしれない。

のはずだった。
しかし、電車でやなと会う予定の綿は、やなが見当たらないし、電話かけても繋がらなかった。
「...もしかして、あなたが探してるのは、白い服と青いジーンズ、ブラウンのコートを着ている若い女性ではありませんか?」
「その人です!見当たりましたか?」
「ある駅についた時、目が見えない女性が電車に乗ると、ある女性に言われたので、私がその女性を連れて、席まで案内してあげました。彼女は必ず席に着きました。」
車掌に嘘をつく必要はない、そしてやなが言った内容と一致してるから、やながこの電車のどこかにいるはずと、綿は信じた。
だったら、どこに?
「焦らないでください。私から他の車掌に連絡して、一緒に探します。四号車の39番の隣、37番ですね?」
「はい。」
「わかりました。まずは席へ戻りましょう、彼女を見つけたらすぐあなたに伝えます。」
無理した笑顔で頷き、綿は自分の席に戻った。
電車はゆっくり室蘭へ、やなを治せるところへ行く。