《鳥居の密室 世界にただひとりのサンタクロース》は、中国語で出版された島田さんの小説の最新作です。主人公の探偵、御手洗潔さんは、友人のサトルくんと会話してる時、ある事件を知りました。サトルくんの女性友人の小さい頃に起こった、辛くて、そして謎のような、未だに解決されていない事件でした。

島田さんの作品を読むのは、二年ぶりでした。それでも、御手洗さんの素晴らしさは微塵も減っていませんでした。クリスマスの鈴音に包まれ、暖かい明りが満ちている町中を歩く御手洗さんは、これを、見透かされた世界と言いました。彼から見れば、誰でもある目的を持って行動している、しかしながら、人々の幻想では、純粋な心を持つ人がいる。それは、すべてに縛られた心を解き放つためなのかもしれません。島田さんの作品では、よく意味深い会話があって、その会話に、事件の核が潜んでいるのかもしれません。そして今回もそうでした。楓ちゃんの心にあるそのサンタさんは、楓を不憫と思ってるだけじゃなく、幼い頃の自分への気休めでもあるのでしょう。

長い間推理していなかったので、最初は最後まで考えず見るつもりでしたが、御手洗さんの一言に揺らぎました。振動と磁場、事件とどんな関係を持ってる?御手洗さんにはいつも引っ張られてしまい、知らないうちに、一緒に考えてしまいます。そして最後、私は正しい答えを推理することが出来ました。自分には推理の力が残っていると喜んでいると同時に、少しだけ、御手洗さんに近づけた気がします。そして、楓ちゃんのことを、悲しく思いました。しかし、御手洗さんの言う通り、誰だって目的を持っている、そしてそのために行動しているだけなのかもしれません。

最後に、サンタさんが真相を暴きたくないと言った時、私は少し感動しました。自分にはもう夢がなくなった、だからこのまま闇の中で生きてもいいが、楓ちゃんは違う、彼女には小さな幻想が残っていた、そのサンタさんも、それを守るために、現状になりましたから、今更自分のために楓ちゃんの幻想を犠牲するわけにはいけません。あるいは、サンタさんは自分が失った夢を思い出したから、楓ちゃんの夢を壊したくないと、自分の悔しさを満たしたかったのかもしれません。原因はともあれ、そのサンタさんが選んだいばらの道は、どれだけつらいかと思ったら、感動していると同時に、完璧な答えがなかったことに、残念な気持ちがしました。

私たちだって、とある目的のために行動しているのではありませんか?言い出したり、胸に隠したり、嘘をついたり、告白したりしました。そう考えると、自分の目的に従って行動すべきだと思うのでしょう。しかし、そうしてると同時に、他人だってその人自身の目的を果たすために行動しています。時に、相手は私たちが思うほど弱くなかった、時に、私たちは自分が思うほど強くなかったのかもしれません。自分の目的を諦めることも、時には必要なのかもしれないと、楓ちゃんとサンタさんを見て、そう思いました。

この作品の中国語タイトルは「鳥居の密室」を翻訳しただけで、「世界にただひとりのサンタクロース」は翻訳しませんでした。サンタクロースといえば、子供たちにプレゼントを送り、新たな一年を幸せな気持ちで迎えるようにと、そのようなイメージがあるかもしれません。サンタさんはおそらく、一人だけじゃないと、私はそう思います。この人生の中で出会った一人一人、一つ一つの事件も、きっとその一部なのでしょう。私としては、一年ほど前のあの交通事故は、一つのサンタさんだったのかもしれません。私に苦痛や不安を送ってくれて、そして、私がやっとそのプレゼントを受け入れたあと、そこにある穏やかな気持ちを見つけました。

世界にただひとりのサンタクロース、彼は驚きを送ったのかもしれない、痛みを送ったのかもしれない、しかし、それを受けて進むことこそが、私たちの義務だと、私はそう思います。