「真田...!」
光はやなを見て、すぐ人を殺すほどの目線をした。
「久しぶりに見たね。ああ、見えませんけど。」
篁は少し戸惑って、そして悟った。
「安倍光、何をした?」
「何を?もうこの醜い世界を見なくて済むにしてあげただけですけど?」
「...」
篁は躊躇わず歩み出し、光にピンタを食らわす。
「すぐ天羽家から出て行って。」
「な...!天羽のくせに、私たちと敵対するつもり!?」
「悪いが、これ以上話したくない。」
光はやめるつもりはないが、浩に引っ張られた。
「今はこうする暇はありません。黒沢を救いたいだろう?」
浩を見て、光は怒りを抑え、天羽家から離れた。
静かさが満ちた。
ホタルも赤蝶も、座るかしないかでさえ、決めない。
「落ち着けましたか?」
「はい。失礼しました。」
篁はやなを、何かを思ってるように、見つめる。
「もう...見えないのか...」
篁が九歳になったころ、初めて宴に参加した。
名声のある天羽家出身で、外見も頭も完璧な篁は、すぐ色んな人に囲まれ、「紹介」まくりされていた。
その時、急にある女の子が現れて、篁を引っ張って、そとまで連れ出した。
「ちょっと!真田家の子でしょ!そんなこと...!」
叱ろうとしてる誰かは、隣の「皇家のお嬢さん」に見つめられ、すぐ黙った。
篁はその女の子を見て、喜びながら、戸惑ってる。
「あなたは...?」
「真田やな。」
女の子は立ち止った。
「困ってるみたいで、手を出しました。誤解でしょうか?」
「いいえ...ありがとうございます。初めてこんなところに来たので...」
「うん、どう致しまして。」
やなの感情のない目線に、篁は安心した。
彼はその宴で、初めて微笑んだ。
「...天羽さん?」
篁は急に、全員に見られてるの気付いた。
「悪い。三人ともどうぞ。」
ホタル、赤蝶、やなが座ると同時に、篁と祐也も元の席に戻った。
「それでは早速、本題に入りましょうか。」
篁に向かって、やなは迷わずすべての情報を言い出す。
「...私たちは、君たちに敵意はありません。
「そして、君たちに協力してもらいたいです。」
光と喧嘩したばっかりの篁なら、すぐうなずくかもしれないが、今の篁はすでに冷静になった。
個人的な感情じゃなく、天羽家を意識してる。
「誤解されてる立場だし、協力したい気はします。
「しかし、協力すること次第で、リスクがあります。
「マスコミ...それとも越井に気付かれたら...」
探偵に協力して、自分の罪を消そうとしてる。
そんな風に言われたら、もう取り消せなくなる。
「...その可能性も考えました。」
やなは緩やかに答える。
「しかし赤蝶がいることで、心配しなくても大丈夫です。」
「...!なるほど!」
「はい。皇家は天羽家の上にある、皇家のお嬢様を動かすには、あなたたちにはできません。」
自分の不足に、篁は笑った。
しかしそれは、悲しさが混ぜる笑顔。
「わかりました。天羽家は全力で協力します。」