「すみません。真田やなさんはいらっしゃいますか?」
急に訪れてきた二人の男性に、義孝は対応に困る。
常に主導権を握る綿はまだ寝てるし、やなはもう来たけど、呼ぶべきなのか。
「真田やなです。どちらさまですか?」
義孝はまだ悩んでる中、やなの声は既に届いた。
「皇家の命に従って来ました。」
「皇?彼女か。何の用ですか?」
「それはわかりません。とりあえず、真田さんには来てもらいます。」
やなは頷き、カバンを取って、二人についていく模様。
「やなちゃん...大丈夫?」
「はい。ちょっと出かけます。」
義孝に頷いたやなは、そのまま、一週間帰らなかった。

「あの...朝田さん?」
綿は目線を上げて、ホタルの心配な目線に見つめる。
「やなちゃんが見当たりませんが、もう学校生活に戻りましたか?」
「いや...今はまだ夏休みだし。」
少しためらって、綿はやなが行方不明になったことをホタルに教えた。
「苗字が皇しかわかないけど。」
「皇ですか...ああ!安倍さんなら、わかるかもしれませんね!」
「ハル兄!いけるかも!」

ホタルの発想、義孝の繋がり、そして遙の手伝えによって、皇家の住所がわかった。
そして綿と義孝は、ともに皇家に向かう。
「真田...やなさん?すみません、聞き覚えのないお名前です。」
「そんな...!」
「真田家なら、このあたりにそのような家族があるみたいですが。」
皇家の女性の説明により、二人は真田家についた。
「はい、真田ですが、どちらですか。」
扉を開けたのは、やなにすごく似てる女性だった。
「や...な?そんな人いませんね。すみません。」
また壁にぶつかった二人。
ここが、やなが言ってた住所のはずなのに。

まさか、事件はどんどん広がっていく。
二人が帰ろうと思ったころ、佐藤から電話が来た。
「くそ野郎、俺を探してるって?」
「ああ、やなくんの行方を探してもらおうと。」
「...?やな?誰のこと?」
「...え?」
綿は落ち着けず、隣の義孝を見つめる。
「君は...覚えてるよね?やなくんのこと、覚えてるよね?」
「僕は...」
義孝は最後まで言えなかったが、綿は悟った。

彼しか誰も覚えていなくなった。
真田やなという人。