森野遥香41歳は、近所の食品スーパーでパートリーダーを務めている。その一方で、彼女はイオンネットスーパーの常連客でもある。いけないですか?別にかまいませんよね。
で、せっせと注文を入力中である。お米、調味料、シャンプー、洗濯洗剤、野菜ジュース、牛乳、アイスコーヒーなどなど。あっ、それから自分用のワインとプレミアムモルツ、ついでに、仕方ないので徹用のバーリアル88円も忘れないで注文した。
ふと目をあげると、リビングでは徹がなにやらDVDを見ている。呑気にてっぺんはげをこっちに向けて、まったく無防備なやつだ。そもそも、あいつがプチ家出を繰り返すので、重い荷物になる買い物が億劫になったのだ。イオンネットスーパーに走ったのは、おバカ徹のせいなのだ!と思うと、ムラムラ殺気立ってくる遥香さんであった。
あいつ、なんか役に立ってんのか?
禁断の問いが頭をよぎる。それを言っちゃあ、おしまいよ、な問いである。稼ぎは少ない、ハゲのデブ、ちっせーことにこだわる、掃除できない、洗濯しない、便所汚す、挙句に夜は文字通りの役立たず・・・
ムカついた遥香は、バーリアル88円の注文を半分に減らした。
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そんなこととは露知らず、森野徹42歳は『命』を観ている。麻生久美子は主役のショム2の妹、樹木希林の娘という役どころ。つまり、父親似ということね、などど言いながら観ている。
ちとつまんないので、ビールでも飲もうと、冷蔵庫に向かう。遥香さんがこっちをがん見しているのは気になったが、別に悪いことするわけじゃなし、と、冷蔵庫に手を伸ばす。
来客用のプレミアムモルツと自分用のバーリアルが並んでいる。
ねえ、プレモルもたまには飲まないと古くなるよね、といいつつプレモルに手を伸ばす徹。
余計なこと、あんたが心配しなくていいんだよ!あんたはバーリアルで十分!あと、健康のために2日に1本にしといたから。飲みたきゃ、自分で買ってきな!
何しろB型なので、理屈に合わないことも平気である。こういうところが群馬女はキツイ。
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仕方ない。もう遥香さんに逆らうのはやめよう・・・そう心に決めた徹は、トボトボと隣のサンクスに向かった。
その後ろ姿を4階から眺めていた望月さんは、「あら、森野さんもすっかりてっぺんはげね」と大笑いしたらしい。
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つづく