袋田昂士37歳は極めて悲観的な人物である。ニュースや新聞では不幸な出来事、とんでもない災害、天変地異、そういった類のニュースにばかり目が行くし、たまにいいニュースに出くわしたとしても、本当は違うんじゃないか、何か隠されているんじゃないか、と考えてしまうタチである。要するに面倒くさい人物である。
そういう彼だから、最近のニュースは見るに忍びないというか、悪いことだらけでお先真っ暗状態である。福島原発の汚染水問題はとっくに地下水を汚染しまくっていて、もはや手の施しようがない状態に違いなく、あとはじわじわ海水汚染が広がり、そのうちハワイあたりまで遊泳禁止になるに違いないと思っている。埼玉や栃木で発生した竜巻はほんの序の口三段目くらいの話で、近い将来、いや、明日か明後日あたり、群馬か千葉あたりでF5クラスの竜巻が襲うんじゃないかと思っている。
もっと悪いのはシリア問題で、米ロの対立は深刻さを増し、またまた冷戦時代へ逆戻り。せっかくの円安もあっという間に円高に舵を切り、輸出業者がひどいことになったあと、今度は財政規律が緩み過ぎて国債が大暴落。長期金利が急騰したところに円安、というより円売りが加速。あっというまに1ドル200円になって、輸入コストが急増。諸物価高騰で哀れ国民の生活は壊滅的打撃を被る。ちょうどそのころ2020年がやってきて、東京オリンピックはボイコットが相次ぎ、やってきた選手も、貧相な東京を目の当たりにして、オー、チープね、とほざいて帰るんじゃないかと思っている。
対して彼の友人である好楽天海37歳は極めて楽観的な人物であり、物事は神の見えざる手によってうまい具合に行くものと確信している。要はノー天気な人物である。
そういう彼だから、最近のニュースで気になることなどひとつもない。汚染水?菅官房長官が大丈夫っていってるんだから大丈夫に違いない。そもそも世界に冠たる技術立国日本なんだから、できないことなどないでしょ、くらいにしか考えたことがない。
竜巻のニュースを見ても、スゲーしか言わないし、誰も死んでないんでしょ?じゃあいいじゃん、でおしまい。洪水で家が流され、道路が寸断されても、需要が喚起されてよかったね、くらいの話である。
ましてやシリアの話など、遠い外国の話でピンと来ない。ピンと来ない話は無視するに限る。しったこっちゃない。安倍首相が毒ガス使うのは悪いことだ、と言っているんだから、悪いことなんだろう。悪いことなら制裁されて当然だ。
円安円高だって、ちゃんと適当なところに収まるべくして収まるはず。安く買って高く売るだけの話でしょ、為替も株も、といって憚らない。国債?日銀がバンバン買うから問題ないでしょ?だって、ダメなんだったらとっくにダメなはずなのに、これまで大丈夫だからこれからも大丈夫に決まってんだよ、という考えだ。なので、長期金利も上がらないし、ましてや円売りなどなるはずがない。
それからオリンピックの話だけど、どう考えても東京がイスタンブールやマドリッドに負けるはずがないから、2020年は東京で決まり。これからは開催に向けての特需と、海外からわんさか観光客が来るので、ウハウハもんで儲かるに違いない。消費税が10%になってもへっちゃらだし、なんならいっそのこと20%くらいにして一気に借金返しちゃえば、との意見も持っている。
さてさて、こんな水と油のふたりだが、なぜ友人同士であり続けるのか、不思議だろ?
いえいえ、何の不思議もございません。なぜなら、彼らは二人とも、麻生久美子の大ファンだからでございます。昨夜も仲良く『チェイス-国税査察官-』の第1巻と第2巻を見たところです。
めでたしめでたし。
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つづく