森野徹42歳は、いわゆるむっつりスケベである。周囲に女性がいる場合は、絶対に下ネタは言わないし、いや、いない場合でも、極力、その手の話は避けるようにしている。それは何も彼がお上品な育ちだからではなく、話せば彼の止めどない欲情というか、変態性と言うか、そういうものがあからさまになるからである。


そのむっつり森野が、昨日は妻の遥香さんと一緒に、映画『魔界転生2003』を観ていた。森野の麻生久美子好きは遥香さん公認である。遥香さんは金麦のCMに出ている檀れいが殊の外嫌いで、「こういう媚びた女が一番ムカツク!」と言って憚らないが、麻生久美子さんについては極めて好意的で、あー、どうやったらこんなシャープになれんのかしら・・・と言ってため息をつくほどである。骨格が違うよ骨格が!と言ってやりたいが、そんな無謀なことができるはずがない。


なので、二人仲良く『魔界転生2003』を観はじめたところまではよかった。今日こそは仲睦まじい普通の夫婦に戻れるかと思った。


が・・・


10分ぐらしたところで、いきなり、おっぱい丸出しの女性が横たわっているではないか!!!しかも、これまでに見たことがない、というくらいに乳頭、つまり、ちくびを勃起させているではないか!!!何とエロいパイオツじゃ!!!!


断っておくが、森野は42歳である。結婚12年目である。ひととおりのことは妻の遥香さんと経験済みである。こんなシーン、「すっげー乳首だね」で軽く流せばいいだけの話である。


が、むっつりの森野にそんな芸当ができるはずもなく、固まったまま、視線を動かそうにも動かせず、生唾を飲み込もうにも飲み込めず、ひたすら無関心を装いつつ、てっぺん禿から湯気を出すばかりである。頭の中では、あの乳首、どうしてやろうか、がじったろうか、いじくりたおしたろうか、と想像しているのにもかかわらず、である。


で、彼の習性では、こういう時には決まって全然無関係な話をしたがる。日頃、遥香さんとはほとんど日常会話をしないにもかかわらず、である。頭の中はパイオツ、いじくりたおしたろか、と考えているのに、口から出るのは、天下国家がどうした、の話になる。


遥香さんはこういう森野がうざったい。今も、あー、こいつ、乳首みてんなー、と見抜いているのだが、また、いつものように無駄話が出るのはめんどくせーなー、と思っている。黙って映画見ろや、と言いたくなる。何も言うな、何も言うな、と念じている。と、そこに


T・・・TPPどうなるのかね・・・


これである。『魔界転生』のどこをどうみたらTPPになるのか知らんが、こともあろうにTPPである。どうせ、おっぱい=OPPAIあたりから連想しているに違いないが、遥香さんはあほらしくて二の句がつけない。


ねえ、どうなるのかねえ


おっぱいで頭がいっぱいの森野は、すでに冷静さを失っている。『魔界転生』のパイオツシーンをみて、TPPどう思う?としつこく聞く異常さに気が付かなくなっている。実にお気の毒な話だ。


しったこっちゃねーだろーが!


遥香さんは、無防備なてっぺん禿をいきなり蹴飛ばすと、胸糞悪そうにダイニングに立ち、冷蔵庫からプレモルを取り出し、ぐびっと豪快に飲み始めた。いきなりどつかれた森野はようやく正気を取り戻す。そして、あー、金麦入れとかなくてよかったー、と胸をなでおろすと、何事もなかったかのように、『魔界転生2003』の世界に没入するのであった。


めでたしめでたし、バカ夫婦・・・


翌朝、4階の望月さんが、少し赤くなった森野のてっぺんハゲを見下ろしながら、おさるのお尻みたい、と腹を抱えて大笑いしたそうだ。


・・・


・・・


つづく