さて、怒涛の出産から少し落ち着きを取り戻した持田夫妻。次の関心事は息子の名前に移った。
「キャサリンの息子の名前はどうなのよ」
都さんにとってキャサリンは、もはやママ友並の扱いである。
「ジョージ、ジェームス、リチャード・・・そんなとこだね」
ウィリアムヒルのオッズを確認しながら晴也さんが答えた。
「ジョージは譲治か譲司ってとこかな・・・ちょっと演歌っぽいのが嫌ね。まあいいわ」
都さんは山本譲二のファンではないらしい。
「で、ジェームズとかリチャードはどうすんのよ」
ふたりともヤンキー上がりではないので、よろしくを夜露死苦と簡単に思いつかないところが難点である。
「是無須でどう?」
晴也さんは昨晩寝ないで考えた名前を都さんに書いて見せた。
「そうねえ・・・『須』が平凡じゃない?いかにも頭の悪い外国人がつけそうじゃん」
あんた、誰の事いってんの?
「でも『酢』じゃ変だろ・・・」
変換キーを押して『す』を探す晴也さん。それなりに懸命である。
「・・・す、す、す、す、・・・ねえ・・・これは?」
と、晴也さんが候補に挙げたのは『侏』である。
「是無侏かぁ・・・いよいよお坊さんね・・・まあ、いいとするわ」
さすが経産婦は上から目線である。
「で、リチャードは?」
隣のベッドで赤ちゃんがお乳を欲しがって泣いているが、都さんの眼中には全くない。
「理茶道か利茶道でどう?」
「うーん、利休の屁理屈みたいだけど・・・まあ、いいわ」
ええんかい・・・
「で、キャサリンはいつごろ届け出るの?お役所に」
「さあ、でもちゃんとチェックしてるから、同じ日に届け出られるよう、準備しとくよ」
「当たり前よ!ここまでやったんだから、名前の届け出も同日じゃないと絶対にダメよ!」
「わかってるよ、まかせとけ!」
やたら張り切る二人のそばで、取り残された赤ちゃんはお乳欲しさにぎゃんぎゃん泣いている。が、そんなことにいちいち反応する都さんではない。さすが、経産婦である・・・
・・・
ま、ともかく、譲司か是無侏か利茶道かしらんが、赤ちゃんの無事な成長を祈ろう。
・・・
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つづく