佐田玄一郎は拍子抜けした日々を送っていた。切られて取り残されるトカゲのしっぽの気持ちがなんとなくわかる気がした。
(・・・なんでマスコミは追加取材に来ないんだ??なんであべっちは任命責任で追及されないんだ??)などとぼやきながら今朝も生ごみを捨てに行ったら、近所の奥さんにフツーに挨拶された。
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金に汚く女にだらしない、見事な二枚看板を持つ佐田である。彼は、密かに自分に自信があった。突っ込みどころ満載のおいしいキャラである。議員がダメでも、コメンテーターかお笑いで食っていけるはず・・そんな皮算用があったからこそ議院運営委員長なんてやめてやった。「コレでやめました」と小指を立てる練習を、筋が攣るまで繰り返した。
なのにである。音沙汰なしである。TVカメラの放列もなければ、コメンテーターの罵詈雑言にさらされるわけでもない。何事もなく日々が過ぎ去る。小指を立てても鼻くそほじるくらいしか用がない。
(写真に問題があったか・・・)
佐田は反省していた。世間の耳目を集められない理由を真剣になって考えている。
(ラブホから出てくるだけじゃインパクトが弱いか・・・緊縛写真でも流すべきだったか・・・)
手元に残った思い出の写真を眺めながら、どうせならこっちをリークするんだったと悔やんでも遅い。
(シチュエーションの問題か??あの最中に女子大生の元カレが踏み込むくらいの迫力が必要だったか・・)
あんた、矢口真里のニュース見過ぎ。
自分の小物ぶりに気づくことなく、佐田は次善策を練る。
(こうなったら檀蜜似のあの女子大生に出産させるしかないか・・・)
世の中、未婚の母にはやけに理解がある。安藤美姫ちゃんのことはみんなが応援しているじゃないか。
佐田は一縷の望みを檀蜜似の彼女の妊娠出産に賭けることにした。
あと10か月・・・あと10か月・・・あと10か月・・・
だが、人のうわさは長くて75日である。小物が完全に忘れ去られるまでに、10か月もの長い時間が必要なわけがない。
・・・数か月後、ゴミ出しする彼を近所のおばさんたちはこう呼んだ。
「あの人、誰だっけ??」
「・・・?? うーん、・・ゴミ出しの人」
・・・
・・・
「・・・私の事・・覚えてますか・・・」
「真鍋朋美さんですよね」
「・・違うよ!最初は思い出せないんだよ、彼は。恋人が真鍋朋美って子から電話があったっていうんだけど、誰だっけ?ってなるんだよ。昔の友達から私が死んだかも、って言われてもすぐに思い出せないんだよ・・・みんな薄情なんだよ、すぐに忘れちゃってさ。佐田さん・・・かわいそ・・・」
「・・・そういう展開ですか・・・」
「で、私は結局死んでるんだか、生きてるんだか、はっきりしないんだよ・・・佐田さんもきっと・・・」
「いやいや、そんなことはないでしょ・・・」
「だって、私はお葬式だってやったのよ、いまさら生き返れないわ・・・佐田さんだって・・・」
「いやいや、そこまでの話じゃないでしょ」
「いや、生き返れないわ。忘れ去られて消えていくのよ・・・佐田さんは・・・」
「真鍋朋美の怨霊・・・侮りがたし・・・」
(※事の成り行きは映画『ひまわり』でご確認ください)
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つづく