賛否があってしかるべき作品。自分は受け止められないところもあった

 

「すずめの戸締り」は「君の名は。」などの新海誠監督の最新作。原菜乃華さん、松村北斗さん、深津絵里さん、染谷将太さん、伊藤沙莉さんらが声の出演をしている。

 

ストーリー:女子高生、岩戸鈴芽はある日、「扉」を探しているという青年、宗像草太と出会う。彼のことが気になった鈴芽は草太の後を追い、廃墟となった施設で謎の扉を見つける。それを開けてしまった鈴芽。そして、足元の石を持ち上げると、それが白い猫になって逃げていってしまった。その後、高校に行った鈴芽だったが、窓から遠くに赤黒い煙が立ち上っているのを見つける。それが自分の開いた扉のあたりだと気づいた鈴芽はその場に駆けつけるが……。

 

面白かったです。

個人的には「天気の子」よりずっと良かったです。新海監督の作品は「言の葉の庭」が僕の中でピークで、その後「君の名は。」でちょっと落ち、「天気の子」でだいぶ落ちたのでもう観なくてもいいのかもなって思っていました。が、今作は久しぶりに観た後に「あ、結構楽しかったな」って思えました。まあ「君の名は。」も良かったんですけどね。

 

ただ、手放しで良かったと言っていいんだろうかって思う点はちょっとあって、そこは少し考えるべきところな気がしています。

 

正直な感想を言うと、序盤はよくわからんって思うところもあったし、鈴芽の雑な行動によってどんどん問題が大きくなっていく、っていうストーリー展開があんまり好きじゃなかったんですが、中盤からは結構ドキドキワクワクって感じで楽しかったですね。

 

映像も綺麗でしたし、ロードムービー感が結構良くて、楽しめました。やっぱり自分はロードムービーが好きなんだな、って思いましたね。まあ女子高生の旅っていうのがそうなるんかなってところもなくはなかったけど、ありそう、って信じられる範囲で話が動いていたのは好感が持てました。

 

あと、鈴芽とお母さんとの関係性とか、結構ちゃんと描けていて良かったですし、いろいろと考えさせられることが多かったです。

 

一方で、良かったと言っていいんだろうかって思ったところが一つだけ。

 

 

※ここからは少しネタバレを含みますので、知りたくない方は読まないことをおすすめします。

 

 

まあ別にいいのかもなって思いますし、自分は特に被災した立場ではないので、とやかく言うことではないんですが、地震の正体がミミズっていうのが、ちょっとなあという気持ちになりました。

 

いや、まあ別に昔からそういう伝承はあったし、それはそれでありだと思うんですが、自分も東京であの揺れを感じた人間として、そういう風に存在を矮小化してしまうのはどうなんだろうかと思ってしまったんですよね。エンタメとしてはいいんだけど、あの時は防げなかった、みたいな話になっちゃうのはどうなんだろうと。

 

被災者ではないのにもかかわらず、まだそこまでフィクションとして受け止められない自分がいるんですよね。あの日、東京もかなり揺れて、外にいる人が恐怖で泣いていて、それでテレビをつけたらすごい状況で言葉を失った。それは自分の中ではまだ全然過去のことでも、物語にできることでもないんですよね。

 

そんなことを言っていたって誰かが物語にしてでも語り継ぐべきことでもあるだろうし、それはただ重く受け止めるだけの作品である必要はないはずだとも思うんです。主張が入るような作品である必要もないし、エンタメ作品にしたっていい。ただ、まだ自分はこの形では受け止められないんだなって思いました。

 

被災された方々は全然気にしないのかもしれないし、ひどい描き方だと言いたいわけではないんですよ。本当に。

 

物語もしっかり描いていたと思いますし、ただファッションとかで扱ったわけでもないとは思うんです。だから、批判すべきようなことでもないと思います。それなりに真摯には描いていたのではないかと思いますし。

 

一方で、この描き方に対して僕以上に拒否感を持つ人もいていいと思います。それって本当に人それぞれですし。ただ、これによって深く傷つく人がいたとするなら、それは監督がしっかり向き合っていくべき問題だとも思います。

 

ただ、僕の中ではむしろ自分の中の「あの日」を思い起こさせるという意味では非常に意義のある作品であるとも言えるのかもしれないと思っています。それは、僕がある程度傍観者で、ある程度経験者だからだと思います。

 

また時間が経ってから観たら、違う感想を持つのかもしれないし、同じように思うのかもしれない。それはわかりませんが、少なくとも一つ言えることとして、違和感はあったけど、嫌いな作品ではなかったということがあります。

 

新海誠監督の作品は合う合わないが激しいのですが、また次も観てみようと思いました。

 

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