前作と比べて話が複雑になりすぎた上、致命的なスターの不在

 

「ブラックパンサー ワカンダ・フォーエバー」は2018年に公開された「ブラックパンサー」の続編。監督は引き続き、ライアン・クーグラーが務めたが、前作主演のチャドウィック・ボーズマンは2020年に亡くなってしまったため、前作でチャドウィック・ボーズマンの妹役を演じたレティーシャ・ライトが主演している。ルピタ・ニョンゴ、テノッチ・ウエルタ・メヒアらが出演。

 

ストーリー:ワカンダの国王であり、ブラックパンサーとして活躍するティ・チャラは難病に侵されていた。彼の妹であるシュリは難病を治すためハート型のハーブを生成しようとするが、その努力もむなしくティ・チャラは死んでしまう。それから一年。ティ・チャラを失ったワカンダは、国際的に厳しい立場に置かれていた。ワカンダにある特殊な鉱物、ヴィブラニウムを各国が欲しがっていたためだ。しかし、ティ・チャラとシュリの母である女王ラモンダは何とかワカンダの地位を保っていた。そんな折、海底にヴィブラニウムが存在する可能性にかけて他国が調査に乗り出す。しかしこの調査が海の中の国、タロカンの怒りを買う。そしてタロカンは地上へと進出してきた。

 

うーん。ってのが正直な感想でした。

 

いや、もうこれは本当に仕方ないし、こういうこと言うのも良くないとは思うんですが、やっぱりチャドウィック・ボーズマンが亡くなってしまったのが致命的だったなと思います。

 

まず、冒頭が意味不明なんですよ。もちろんチャドウィック・ボーズマンが亡くなってしまっているから、ティ・チャラを死なせなければいけなくて、しかもCGなどでチャドウィック・ボーズマンを登場させるのはあまりにも敬意がないからしたくなくて、だからこういう形になったんだろうとは思うんです。ただ、いきなりみんながあわただしくいろいろやってて、で、「ティ・チャラは死んだ」ってなる展開に、全然入り込めないんですよね。まあいきなり死後の世界を描くわけにはいけないんだろうけど、それにしても最初からクライマックスっぽい展開をしているのに、観客は置いてけぼりって感じがしちゃったんですよね。

 

で、今作のメインとなるシュリの物語が始まっていくんですが、これも全然共感できなくて。どうしてもティ・チャラと比べるとワガママで国のことを考えていないように感じてしまうんです。そりゃもともと予定のなかったキャラクターを無理やり中心に据えているから仕方ないんだろうけど、あんまり応援できなかったです。

 

ヴィブラニウムを各国が欲しがっているというような、ワカンダを取り巻く環境なんかも結構しっかり描いているんですが、それが逆に話を複雑にしてしまって、ちょっと処理しきれなかった感じでした。そもそもティ・チャラ無き後のワカンダをどうしていくのか、ってところだけでも結構考えることが多いのに、世界情勢に対してワカンダがどうしていくのか、更に海底の国タロカンとの関係性、といった要素が入ってくるので、ワカンダの話だけでもかなり詰め込まれています。それにシュリの成長や、シュリとラモンダとの関係性、タロカンの人々の過去なども描かれるので、観ていて消化しきる前に話が進んでいく印象でした。

 

こういう風に論じるのも良くないんだろうなとは思うんですが、チャドウィック・ボーズマンのカリスマ性というか魅力ってやっぱり大きくて、今回のシュリではそれだけの魅力を放てていなかったと思います。敵もちょっとあんまり魅力がなく感じてしまいましたし、スター不在の中、複雑に進む話が結構しんどかったですね。

 

2時間半以上ある上映時間がかなり長く感じましたし、個人的にはなかなか厳しかったです。

 

まあ前作が面白かった分、期待しすぎたっていうのはあると思いますが。

 

もう少しシュリのキャラが合えば印象も違ったんだろうけど、「ブラックパンサーの不在」を強く感じさせる作品となってしまいました。

 

ただ、映画として論じてしまうと、こういう意見になってしまいますが、こんな状況の中でよく作ったとは思います。多分今作に臨んだ人たちはかなり悩んで、試行錯誤を繰り返して、何とか新しいブラックパンサーを世に送り出したんだと思います。その努力はすごいと思いますし、価値があることだと思います。

 

ブラックパンサーが今後どうなっていくのか。ひとまず次の物語へのつなぎとしては今作は最低限の仕事はしているので、注視していきたいと思います。

 

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