登場人物に全く感情移入できないが、退屈せずに観られる

 

「悪なき殺人」は「マンク 〜破戒僧〜」などのドミニク・モル監督によるスリラー映画。「イングロリアス・バスターズ」などのドゥニ・メノーシェ、「クイーンズ・オブ・フィールド」などのロール・カラミー、「レ・ミゼラブル」などのダミアン・ボナールらが出演している。

ストーリー:フランスの山間部で女性が行方不明になった。アリスは夫のミシェルに隠れて町外れで孤独に暮らしているジョゼフのところへ通っている。しかし、女性の事件があった後、ジョゼフの様子がおかしいため、気になっていた。一方でミシェルはアリスに隠している秘密があった。

 

何だろう、面白かったというのとはちょっと違うかもしれないんですが、最後まで退屈せずに観られた一作でした。

脚本自体は上手くできていて、ご都合主義の連続なのが逆に面白い感じになっていました。どんな確率なんだよそれは、っていうレベルの偶然が相次いで起きるのが面白くて、もうどんな無理な展開でも許してしまう感じ。このあり得ない偶然の積み重ねによって、荒唐無稽な話になっていくのですが、役者の演技とシーンのつなげ方によってそれを和らげているのが上手いなと思いました。

ただ登場人物がみんなあんまり好きになれないから、楽しかったかと言われれば何とも言えないところなんですよね。

みんな結構いっちゃってて、感情移入は全くできなかったです。これがフランスでは普通なんですか?ってくらい自分の倫理観とは離れていました。

割り切って物語の偶然やパズル的な要素を楽しむのは良かったのですが、まあそうなるとすごく俯瞰したところから映画を観ることになってしまうので、まあ心に残る作品になるかと言われればそうでもないって話になっちゃいます。

で、その俯瞰した視線で観て楽しい!と言えるほど物語自体がよくできているわけでもないってのがちょっと弱いところですかね。

ある出来事が他の人の視点で見たら変わってくるみたいなのは面白いんですが、それもそこまで劇的でないように感じてしまいましたし、どうせならもっともっと偶然が重なってほしい感じがしてしまいました。「ナイブズ・アウト」みたいに凝っていれば、登場人物が気に入らなくても物語にのめり込んだ気がするんですけどねえ。

と、ちょっと辛めの感想になりましたが、合う人には合うだろうし、登場人物に感情移入できないだけで最後まで退屈はしない一作で良かったと思います。

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