設定は抜群に面白い。一方で登場人物の行動には疑義が残る

 

「オールド」は「シックス・センス」などのM・ナイト・シャマラン監督による最新スリラー映画。「エマ、愛の罠」などのガエル・ガルシア・ベルナル、「ファントム・スレッド」などのヴィッキー・クリープス、「ジョジョ・ラビット」などのトーマサイン・マッケンジー、「マッドマックス 怒りのデス・ロード」などのアビー・リー・カーショウらが出演している。

ストーリー:ガイとプリスカは離婚寸前だったが、息子と娘を連れ、最後に家族旅行として南国のリゾートへやってきた。そこのホテルで一家はプライベートビーチに招待され、崖に囲まれた美しい海辺にやってきた。そこには他にも幾人かの招待客がいた。ビーチを満喫していた彼らだったが、ガイの息子のトレントが流れ着いた死体を発見した。ビーチから外に出ようとするが、強烈な頭痛によって気を失い、ビーチに戻されてしまう。そして、時が異常な速さで進んでいくことに気がつく。彼らはどんどん老いていくのだった。

 

面白かったです。

手放しで褒められるような作品ではない気もしますし、何とも言えない違和感や、粗いところもかなりあると思うのですが、常に「どうなるんだろう」と先が気になる作りになっていますし、予告編や設定から受ける印象通りの作品だったと思います。

あとはもうそれが合うか合わないか、かな。

ぶっちゃけて言えば脚本の完成度は低いと思います。設定が奇抜だから仕方ないという面もありますが、それにしてももう少し矛盾点を潰せなかったのか、と思わなくもありません。登場人物たちの行動も随分と合理的でなく、説得力に欠ける行動が多かったと思います。

これは、恐らくキャラクターの行動原理が単なるホラー映画と同じように描かれてしまっているからなんですよね。殺人鬼やモンスターが出てくるホラー映画であれば、単独行動を取ったり、疑心暗鬼になってバラバラになったりというのがわかるのですが、今作の場合は「謎の現象が起きている」というところなので、もっと協力すると思うんです。このアプローチの違いが上手くできていないし、ステレオタイプなホラー映画のキャラクター性で描いてしまっているので、違和感が大きかったです。

登場人物たちがビーチから逃げようとする方法も、あまりにも策がなすぎますし、もっと頑張ってほしいと思ってしまうレベルの簡単なものばかり。しかもリスクに対しての安全策が全くなく、簡単に失敗してしまいます。

この辺が結構きついですね。せっかく面白い設定で、先が気になるような描き方に成功しているのに、肝心のキャラクターたちがイマイチな動きしかしないので、中盤は結構ダレてしまいます。

一方で、最後に一連の出来事が何故起きたかという説明がそれなりになされているのは良かったですね。「それなりに」と書いたように、納得できない人も多いような気もするのですが、「はい、不思議。」っていう感じで全部投げ捨てて終わらせていないことには好感が持てました。

 

でも、色々と気になるところはあったけど、時間、老いに対して改めて考える良い機会にはなったと思います。自分がそこにいたらどうなるんだろう、っていうところはすごく考えたし。まあそれだけのめり込んで見ていたからこそ「そうはならんやろ」って登場人物に対して思ってしまったところはありますね。

☆4つなのに割と辛口になりましたが、それはもっと綿密に脚本を練れば、めちゃくちゃ傑作になった気がする。という、もったいない気持ちからで、☆4つが妥当な感じで面白いですよ。設定が抜群にいいですし。不思議な設定のスリラー映画として、安定して楽しめる一作ではあります。設定が良すぎて高望みをしてしまっているという面が大きいです。

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