設定は抜群に良いのに全くそれを活かせなかった残念な物語

 

「レミニセンス」はテレビドラマ「ウエストワールド」などの脚本を執筆し、クリストファー・ノーラン作品で夫のジョナサン・ノーランと共に脚本を担当しているリサ・ジョイが監督デビューを果たしたSFスリラー作品。「ローガン」などのヒュー・ジャックマン、「ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション」などのレベッカ・ファーガソン、「クラッシュ」などのタンディ・ニュートンが出演している。

ストーリー:近未来。海面が上昇し、降り注ぐ太陽熱に耐えられなくなった人類は水上の都市で昼夜逆転生活を送るようになっていた。そんな中、ニック・バニスターは戦友のワッツと共に記憶を再体験できるというサービスを提供する店を経営していた。しかし、メイという若い女性がその店に現れた日から、彼の人生は変わってしまった。

 

期待しすぎた。というのが正直な感想です。

最初は良かったんですよ。映像は良い感じだし、何より人類が水上の都市に暮らして昼夜逆転生活を送っているという設定がめちゃくちゃキャッチーでした。そういうある意味で終わりに向かっていくような世界観なので、人々が過去にすがる、記憶を追体験するという需要が大きいというのに説得力があったんですよね。別に普通の生活をしていたって過去を追体験したいという人は多いだろうけど、この世界だからこそ、そうしたがる人がより多くなるだろうなあ、という印象がありました。

だから、すごくワクワクしたんです。

で、どんな壮大な物語が始まるんだろう、と。

ところが、もうとにかくこのメイという女性を探す。それだけの話に終わってしまっているんです。もう勘弁して欲しい。物語のスケールが小さすぎる。そこから話が一気に膨らむならまだしも、中盤になっても全然メイを探しているんです。なんでよ。もっと展開してくれよ。この素晴らしい設定の世界を堪能させてよ。これじゃこれだけの設定にほとんど意味ないじゃない。

それにさ、ヒュー・ジャックマンがいかにカッコ良くたって、良い歳のおっさんが若い女に狂わされているだけにしか見えないし、それがしんどすぎるんですよね。自分の仕事の倫理観も投げ打ってめちゃくちゃやるおっさん。もう痛々しくて観ていられません。

クリストファー・ノーラン作品のような映像と設定とまでは言わないけれど、それなりに壮大な作品を観に来たつもりだったのに、ひたすらおっさんが若い女に人生狂わされているのを観るだけ。どうしてこんなものを観なきゃいけないのか……と悲しくなりました。

しかも記憶再現の設定がよくわからなくて。どういう状態になっているのかもわからないし、なんか副作用というか危険な使い方みたいになる原理も説明されるんだけど納得しにくい感じで。この設定を上手く利用して物語を作っているというよりも、「ああ、これは現実じゃなくて記憶の中だったのね」という驚きを出すためだけにこの設定を作ったレベルでしか活かせていないのが本当にもったいなかったです。もっと「実はこうだった!」とか「ああ、端にこれが映っている!!」みたいなそういう使い方をしてほしかったです。

そんなわけで設定と映像は良い感じなのに、おっさんが女の人を追うという、ものすごく残念でミニマムな話になってしまったのが残念でした。もっと良い内容が作れたよ、この設定なら。

 

でも期待せずに観たら面白いのかもしれないですし、映像とか綺麗なところや、なるほどーというところもあるので、興味があるなら観てみたら良いとは思います。自分はとにかく期待しすぎちゃったんだよなあ。

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