ミステリー要素はかなりバカバカしいが物語は素直に面白い

 

「映画クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園」は人気アニメ「クレヨンしんちゃん」の劇場映画29作目。今作はミステリー仕立てで物語が展開される。「クレヨンしんちゃん 爆盛!カンフーボーイズ〜拉麺大乱〜」の髙橋渉監督がメガホンを取り、テレビシリーズ同様小林由美子さん、真柴摩利さん、林玉緒さん、一龍斎貞友さんらが出演。

ストーリー:超エリート校で有名な私立天下統一カスカベ学園に一週間の体験入学をすることになったしんのすけたち。ここは全寮制でAIの「エリート判定」によってクラス分けがされ、そのクラスによって待遇が変わるというヒエラルキーのある学校だった。型にはまらないしんのすけはどんどんエリートポイントを奪われていき、連帯責任でポイントを奪われることが多くなってしまった風間くんは鬱憤が溜まっていた。それが爆発し、大げんかとなった夜、風間くんはお尻に噛み跡がある状態で発見される。そして、風間くんはどうしようもないバカになっていた。しんのすけたちは風間くんを助けるため、学園の噂でお尻を噛むという吸ケツ鬼の謎に迫っていく。

 

面白かったです。

ちょっと内容は難しいところもあるのかな?と思いつつ、子どもでも大人でも楽しめる一作になっていました。

思えばちゃんとクレヨンしんちゃんの映画観たの初めてかもしれないです。テレビで観たことはあった気がしますが、それも最後まで観たのかどうか、って感じで。特にアニメも観たことがなかったので、そんなに思い入れがあるわけではなかったのですが、そういう自分でも楽しめる一作でした。

まず、天カス学園のエリートのシステムが非常に日本的で面白かったですね。エリートを養成するのに、連帯責任を負わせるという、全くエリートを養成できる気がしないシステム。多分この辺はわかって皮肉的に描いていると思いますし、そもそもこのシステムはエリートを養成できるとは到底思えない前時代的なものとして設定されているので、上手いと思いました。エリートポイントが高いものに高い立場を与えるというシステムもただただ競争を煽るだけで足のひっぱりあいになりますからね。

一方で、こういう風に可視化されるとダメな部分がわかりやすいシステムが、現実社会では運用されているものもあり、考えさせられます。もちろんメリットもあると思うので、一概に批判的に描いているわけではありません。ただ、そこに欠けているものがある。ってとこも含めてシステムに踊らされるのではなく、人が運用していかなければいけないと改めて感じました。

というわけで設定がかなり良かったですね。しんのすけや風間くんがこうしたルールやシステムに対して異なるアプローチで対応していく姿を見て、子どもたちにも考える芽が生まれるのではないかと思います。しんのすけ側のアプローチだけがもてはやされるのではなく、風間くんの優等生的アプローチを肯定的に描いていたのも良かったと思います。

あとはフワちゃんを本当にどうでもよく使っているところも面白かったですね。「ゲストとして出演させなきゃいけないから出した」って感じの雑な登場の仕方で、なんかその適当さが合っていて面白かったです。演技できるとは思えないからその置き所はちょうど良かったなあ。

 

ミステリー要素は割と適当だし、まあ筋は通っているけどトンデモって感じですが、雰囲気が上手く作られていたので、面白く観られました。最初にオナラを誰がしたかっていうところを推理するのバカバカしさもクレヨンしんちゃんらしかったです。まあでも個人的にはクラスでオナラをしちゃった子とかがバカにされたりするのを助長しちゃうから、そんなの暴くなよって気もしますが。

最後には涙が流れそうになる感動的なシーンもあり、結構グッとくるし、考えさせられることが多かったので、良かったですね。さすが、評価が高いシリーズなだけあるなあ。

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