重く、厳しい物語だが観て良かったと思える一作

 

「トゥルーノース」は在日コリアンの清水ハン栄治監督が初めて監督した3DCGアニメーション映画。北朝鮮から国外脱出した脱北者の方々に聞いた話をもとに作り上げた。

ストーリー:日本で暮らしていた過去を持つヨハンとミヒの一家は平壌で幸せに暮らしていた。しかし、父親に政治犯の疑いがかけられる。そして母親とヨハンとミヒは強制収容所に入れられてしまう。そこは人権を無視した凄惨な場所だった。

 

面白かったです。

すっごくしんどかったですが、ちゃんと面白かったですね。こういう題材だと面白かったって言っていいのか?って思うけど、面白く作ろうっていう作り手の意図があったと思うので、素直に面白かったって言いたくなる一作でした。

まあでもしんどい。

とにかく強制収容所の理不尽さがすごくて。こんなことが今も北朝鮮では行われているのか、と思うと本当に心が痛みます。そういう国に生まれなくて良かったと、自分は恵まれた環境で生きてきたんだなあと改めて思いました。

ちょっと韓国の映画「スウィング・キッズ」を想起させる内容でした。ただ、この「トゥルーノース」で描かれていることは現在進行形のことなんですよね。それが本当に怖いと思いました。特に妊娠したことを罪として殺されたりしているのは恐ろしいです。しかもその理由が収容所職員によるレイプだったりするということで、本当に地獄のような環境だと思いました。

その中で収容者同士でヒエラルキーのようなものができていくところもリアルでしたし、これによって統治しているシステムも恐ろしいですね。

今作の良かったところはアニメで表現したところです。アニメにすることで前述のようなひどい環境についても、直接的な表現自体はマイルドになっていました。だから映像に対して目を背けたくなるということはなく、最初から最後までちゃんと観なければ、と思う一作になっていたと思います。

また、アニメの技術的には少し昔の映像レベルに感じましたが、それも観客の想像を喚起させるという意図があったのかもしれません。いずれにしろ、悲惨さを伝える上でただストレートに描くのではなく、こういう工夫をしていたので、押し付けがましくもなく、色々考えることができたと思います。


というわけで、ちゃんと映画として面白い一作になっていましたし、現実に起きている地獄を垣間見られる一作でした。しんどいけど、観て良かったです。

公式サイトはこちら