断片的な物語が続くだけ。合う人には合うかもしれない

 

「ホモ・サピエンスの涙」は「愛おしき隣人」などのロイ・アンダーソン監督の最新作。第76回ヴェネツィア国際映画祭でロイ・アンダーソン監督は今作によって銀獅子賞を獲得した。出演はレスレイ・リヒトワイズ・ベルナルディ、アーニャ・ノバ、タティアーナ・デローナイら。

ストーリー:さまざまな時代、さまざまな場所で人々が生きている。それらを断片的に切り取った映像集。

 

ストーリー手抜きかよ!って感じだと思いますが、実際そうなんですよね。今作はどういう風にストーリーを説明したらいいのか、さっぱりわかりませんでした。

だって本当に人々の生活を断片的に映し出しているだけなんだもの。

映画が始まるとひたすらにショートストーリーが展開されます。というか、ショートストーリーとも言えないくらいの短い時間の日常が映し出されるだけなんですよね。たまーに何度か出て来る人がいるんだけど、ほぼ繋がりがなく、オチもほぼない物語が延々と語られる、なかなか稀有な映画です。

何だろう、評論家が好きなのはわかる気がしますね。あと、妙にすごく刺さる人がいるのもわかります。

ただ、僕としては本当に何でもなかったというか、こういうの観たかったら色んなカフェの外が見える位置でコーヒーを飲みながら人々を眺めている方が面白いかな、って感じでした。

いや、でもいいとは思うんですよ。こういう映画があっても。僕はひたすらに虚無を感じていましたけど、やっぱり合う合わないの問題で、質としては高いんじゃないかと思います。

にしても、こんなにたくさんのエピソードがあったのに、ほぼ覚えていないというのも珍しい気がします。よほど自分に合わなかったんだなあ。と。これは向こうでは新型コロナウイルスの影響が出る前に公開されていた作品なので無理なのですが、同じ撮り方で新型コロナ以前、以後を描いたりしたら面白いのかな、とか思っていました。そんなの浅はかかもしれませんが。

まあとにかくすごく玄人好みな感じがした作品でした。もしかしたら何度か観たら色々とつながって面白いのかもしれないですが、いつも言っている通り、何度も観る前提で作って、一度で伝えることを放棄している作品のことは嫌いなので、こういう評価です。

それでも、合う人にとっては良い作品だとは思うので、興味があるなら行ってみたらいいと思います。もう少しエピソードがわかりやすい展開をしてくれたらもっと自分も楽しめたのかな、とは思いました。

 

「ホモ・サピエンスの涙」っていうタイトルは好きだったんですけどね。

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