主人公たちに感情移入させていく流れが見事。良質なクライムサスペンス映画

 

「バッド・ジーニアス 危険な天才たち」は2017年にタイで公開され、ランキング1位を獲得したスリラー映画。日本では映画祭やイベントで「頭脳ゲーム」の邦題で上映されていたものが一般公開された。監督は長編デビュー作「Countdown」がアカデミー賞外国語映画賞タイ代表に選ばれたナタウット・プーンピリヤ。主演はファッションモデル出身のチュティモン・ジョンジャルーンスックジンで、その他のメインキャストも演技経験は浅かった。本作は中国でSAT(アメリカの大学入試時に考慮される要素の一つの試験)が不正によって中止になったことから着想された。

ストーリー:教師をしている父と同居しているリンは成績が非常に優秀だった。しかし、彼女は仲良くなったグレースからお金を払うからカンニングさせて欲しいと頼まれる。そして、リンの「ピアノ教室」と題されたカンニング教室には多くの生徒がお金を払って通うようになっていった。その後、彼女たちは、国際的なテスト、STICの受験でカンニングをすることを目指すが……

 

めちゃくちゃ面白かったですね。

まあモラル的なものを考えると、そう手放しに主人公たちを応援できないって感じなのですが、それを上手くそらしているのが良かったです。ちゃんとバレるバレないの話が出てきたり、不正行為に対して大人がしっかり怒ったりするし。

登場人物もそれぞれ魅力的で、何でこんなにダメなやつらばかりなのに好感が持てるんだろう、って思いました。メインキャストの4人は演技経験があまりなかったということですが、難しい役どころをうまく演じていたと思います。

冒頭「STICのカンニングをしたことについて」の尋問に登場人物それぞれが答えるシーンから物語が始まるのもスリリングで面白いですね。
そこから高校1年生に時系列が戻り、グレースたちとの出会いが描かれる構成が、時系列が飛んでいるにもかかわらず、非常に見やすくて良かったです。

何でもないテストのシーンがこんなにスリリングに描けるのか、と感心してしまいました。どう考えたってモラル的に擁護できないのですが、リンに感情移入させるように上手く描いていて、観客として楽しめるようになっていたのが今作の成功のカギの一つだと思いました。

一方で、ラストの流れなんかはあんまり好きじゃなかったっていうのが正直なところです。ただ、落とし所が非常に難しい題材だったので、これがベストだったかはわからないですが、ラストはこういう形にせざるを得なかったのかな、とも思いました。

「オーシャンズ」シリーズのようなイメージという風に言われていますが、個人的には「グランド・イリュージョン」の方が印象として近かったですね。ただ、これはまあ個人的な意見だとも思いますので。

何につけても、今作はリンの魅力がすごくあったっていうのが大きいかな、と思います。なんだろう。パッと見、すごく綺麗な訳ではないんですが、凛としていて(ダジャレじゃないです)このキャラクターと合ったキャスティングだったなぁ、と思いました。

題材的に拒否感を覚えるのであれば、無理に観ることはないと思いますが、クライムサスペンスものとして非常によくできているので、オススメです。

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