特徴がありつつも統一感がある良いオムニバス映画

 

「詩季織々」は「君の名は。」などの新海誠さんが所属するアニメーションスタジオのコミックス・ウェーブ・フィルムが中国のアニメーションスタジオの絵梦アニメーションと共同で製作したアニメーション映画。李豪凌総監督の下、3つの作品のオムニバス作品として公開される。全て中国を舞台にしている。

ストーリー:「陽だまりの朝食」…ある青年の朝食を巡っての追想。
「小さなファッションショー」…人気モデルが妹の憧れとして生き続けようとするも、後輩のモデルに追い上げられてくる物語。
「上海恋」…中学時代、些細なすれ違いから会わなくなってしまった男女の物語。

 

面白かったです。

個人的には特に「陽だまりの朝食」が好きでした。まあこの作品はモノローグが延々と続く、ほぼ小説のような内容なのですが、映像が綺麗だったので、良かったですね。言葉の力もありましたし、出てくるビーフンが本当に美味しそうで、良い意味でお腹がすく作品でした。
匂いまで漂ってきそうな感じで、リアルでしたね。

で、語られるエピソードも非常に良くて、心を掴まれる内容でした。ドラマチックなことがたくさんあるわけではないんですが、丁寧に物語を紡ぐことによって、これだけ心が動くのですね。映像も本当に臨場感があるし、良かったです。

ラストは思わず涙してしまいましたし、何だか主人公に寄り添って一緒に時を生きてきた感じがあって、満足度が非常に高かったです。

「小さなファッションショー」は、ちょっとやりたいことはわかるけど、上手く伝わってこなかった印象でした。まあこれは個人的な好みもあると思うので、仕方ないのかな、と。とはいえ、これはちょっと「陽だまりの朝食」が自分にとってすごくストライクだったから、余計に物足りなく感じてしまっただけな気がしますが。

「上海恋」はちょっと主人公のキャラクター設定が、最初苦手で、どうなのかな、って思ったんですが、途中からどんどん感情移入できるようになり、ぐいぐい引き込まれました。
中国や韓国の恋愛映画っぽい展開で、いろいろな仕掛けも結構上手く行っていましたし、切なさとドキドキと、なんだか色々なものがたくさん胸を去来しました。

それぞれの作品で、ちゃんと物語があり、特徴もあり、良いオムニバスだったと思います。別々の物語なのに、ちゃんと統一感もありましたし、それぞれが印象に残っていて、上手くまとまっていたという印象でした。

単純に映像も綺麗なので、興味があるならぜひ映画館で観て欲しい一作です。

公式サイトはこちら